聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

「マルティーナさんは何か聞いてる?」
「い、いいえ! ただ興味あるなと思って」
「俺も、俺も。なんか、めちゃくちゃ豪華なご馳走が出てきそうな雰囲気するね」

(パウラは、ウーゴさんには内緒にするつもりなんだった。危なかったわ)

 期待しているウーゴに対して、悪い気がするにはした。
 けれど、何も知らずに食べてしまって大騒ぎしているウーゴに、パウラと一緒になって誠心誠意謝るのは楽しそうだ。
 そうして3人で大笑いする光景を、ありありと思い浮かべることができた。

 マルティーナはがんばって笑いを堪えた。

「そろそろ教室に行きましょうか?」
「そうだな、そうしよ」

(せめて、すぐに差し出せるように、飲み物ぐらいは用意しておこうかしら?)

 さっき堪えきったはずの笑いが漏れてしまった。
 何も知らないウーゴはのん気に言う。

「マルティーナさんは歓迎パーティーが本当に楽しみなんだねー」
「ええ。絶対楽しいもの!」

 しかし、マルティーナたちがタローロの蒸し料理を食べることはなかった──

< 60 / 220 >

この作品をシェア

pagetop