聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
あのときはまだ6歳という年齢もあって、うれしかったし、何ひとつ疑いもしなかった。
ただただ輝かしい未来が自分を待っているのだと信じていた。
家族の期待を一身に背負っていたことも、幼いながらに誇らしかった。
マルティーナはかぶりを振った。
(新しい門出に、昔のことなんて思い出すのはよくないわよね……)
苦い気持ちをひとまとめにして排出するつもりで、思いっきり息を吐き出した。
そうして今度はアンダルイドの温かい外気を吸い込んだ。
ルーボンヌの肺が凍えそうなほどの冷気とはまるで違う。
真っさらな気持ちに切り替えると、マルティーナは魔法学院の門をくぐった。
まだダニエラが自分のことを見守ってくれている視線を背中で感じていたけれど、あえて振り返ることはしなかった──