聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 ルーカスは顔では平静を装いながら、手のひらをぐっと握り締めた。

「稀有な能力とは?」
「神聖魔法と自然魔法の両方が使えるのですよ」
「これまでに両方使える人物がいたことは?」
「ありませんね」

(やはりそうなんだな)
 
「彼女は、聖女ではないのですか?」
「違います。神聖魔法については、少し治癒魔法が使える程度、浄化や祝福は全く使えないそうです。にも拘らず、誰にも教わらずに自然魔法はかなり上級なものまで使えた……当初はそれが自然魔法だということも判断できなくて、祖国では異端者扱い。神学校の教師陣も、扱いに苦慮していたそうです」

(ああ、そうだったのか…… 僕は傷口に塩を塗りこんだのか……)

 マルティーナに初めて会ったとき、『ルーボンヌ神国の聖女がなぜここにいるのか』というようなことを訊いてしまったことを思い出す。

(それで怒っていたのか……アーロンのことを怒っていたのではないのだな……)
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