聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

「しかし、そのきっかけを作ったのは我が国です」

 本当は『僕の父です』と言いたいところだった。
 前世の父親、約200年前のアンダルイド国王のことだ──

 第5代に当たるその国王は、ひと言でいえば『愚王』だった。
 享楽にふけった彼の統治時代は、国が荒れに荒れた。
 汚職が蔓延し、国の中枢は機能不全に陥ったのだ。

 国王が病気になり、いよいよ死期が近くなったときには、第7王子のアーロンは安堵した。
 悪夢のような時代がようやく終わると。
 そして長兄なら、この国を立て直してくれるはずだと。

 ところが、まだ遊び尽くしていなかったのか、国王はルーボンヌ神国から聖女を買った。
 もちろん表向きには“招聘した”という表現が使われた。
 前例がないにも拘らず、金貨の山を前に、ルーボンヌはいとも簡単に頷いたのだった。

 そうしてルーボンヌは気づいてしまった。
 聖職者は外貨を稼ぐ手段になると。
 それ以降あの国はますますおかしくなってしまった。
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