聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

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 マルティーナはひとり、特別教室棟を歩いていた。

(確か『突き当たりにある』って……)

 この棟には何度か授業で来ていたが、指定された研究室のある最奥部までは、まだ足を踏み入れたことがなかった。

 放課後は廊下が消灯されているせいで薄暗く、心許なく感じた。
 奥に進めば進むほど、外にいる学生たちによる話し声は遠ざかり、やがて静寂が訪れた。
 もはや聞こえるのは自分の足音のみだ。
 特別な装備もなく、ダンジョンへ入り込んでしまったかのような心細さを感じた。

(パウラは今頃、課外活動中かしら?)

 園芸部に入ったという報告は先日もらっていた。
 今朝一緒に朝食を取っていたときに『今日からなの』だと、うれしそうに言っていた。
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