聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました
※
マルティーナは前向きな気持ちで、ドアを開けた。
「失礼しま……す」
教師たちはまだ来ていないようで、研究室の中には学生がひとりいるだけだった。
軽く上がっていたはずのマルティーナの口角は、一瞬のうちに下がってしまった。
(どうして選りに選ってこの人が!?)
係ることがないように距離を取ろう、と決めていた人物だった。
「僕も研究に立ち合わせてもらうことになっているから、これからよろしく」
しかし、相手は第3王子だ。
すぐにでも『こちらこそよろしくお願いします』と頭を下げるべきなの理解していた。
それでも声は出なかった。
(私は『聖女ではない』とはっきり訂正したはずなのに、どうしてルーカス殿下が立ち合いなんて……はっ! もしかして、まだ聖女だと思い込んでいるのかしら? あらら? ということは、聖女の神聖魔法を期待されてる?)
それは非常に困る。
学院長はマルティーナの神学校での成績が散々なことは知っている、と思っていたのに──
(実際はたいしたことない治癒魔法しか使えないとわかったら、私はどうなってしまうの? まさか王子権限で国外追放とか?)
血の気が引いていく。