聖女になれなかったので魔法大国へ留学することにしたら、まさかの再会が待っていました

 これで神聖魔法の研究対象にすらなれないとバレた日には……

(さようなら、私の留学生活。思いの外、短いものになってしまったわ)

「改めて自己紹介してもいいだろうか?」
「えっ? ええ!」

 目の前にいるルーカスをほったらかしにして感傷に浸っていた。
 そのルーカスに予期せず話しかけられたせいで、焦って声が裏返ってしまった。

「A組のルーカスだ」

(フルネームは名乗らないのね)

「B組のマルティーナです……」

 わざわざ断りを入れたくせに、名前を名乗っただけで自己紹介は終了してしまった。
 あとには気まずい沈黙が続いた。

 ルーカスの目線は研究室をさまよっている。
 第3王子といえども、居心地が悪いのは同じらしい。

「……その、」
「はい?」
「……すまなかった」
「えっ?」
「君の事情も知らないのに、初対面で……何というか、その……配慮のないことを……」

 もごもごと謝罪する間、一切こっちを見ようとはしなかった。
 ルーカスという人物が少し理解できた気がする。

(不器用な方なのね)
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