無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
1章 13 強く逞しく
町に出て朝食を食べ、ついでに手持ちのアクセサリーを全て換金し終えた私達はホクホク顔で宿屋に帰還した。
何しろ、今の私達の所持金は約2000万ロンになっていたのだ。
「すごいですね〜! まさかこんな大金になるとは思いませんでした!」
「リアンナ様。これくらいあれば、この町に家を1軒買って暮らせますよ!」
テーブルに置かれたコインを前に、ニーナとジャンが興奮している。
確かに2000万ロンなんて大金、私だって手にするのは初めてだ。家を買って暮らしていくことだって可能だろう。
けれど……。
「ねぇ、二人共。少し聞きたいことがあるのだけど、もしかしてこの先もずっとこの町で暮らしていくつもり?」
「え?」
「それは……」
言葉に詰まるジャンとニーナ。
「私は、もうこの町には残りたくない。だって、この土地はマルケロフ家の領地なんでしょう? 虐待したり、毒薬を渡して自殺を勧めるような家族がいるような場所で、私は暮らしたくない。大体、二度と戻ってくるなと言われているし……。いつまでもこの町に留まっていれば、いつかは父や兄に見つかってしまう可能性があるでしょ?」
「リアンナ様……」
「確かにそうですね……」
神妙そうな顔になるニーナとジャン。
「だから私、この町を出てマジックを披露しながら旅に出ようと考えているの。それで自分の住みたい場所を見つけたら、そこで暮らしてみるのもいいかもしれないし」
マジックをしながら、旅を続ける……実を言うと、自分が密かに思い描いていた夢だったのだ。
「だけど、これ以上私のことで二人を巻き込みたくはないの。だから、もし二人はここに残りたいなら、遠慮なく言って。お金も退職金代わりに半分あげるから」
正直な話、右も左も分からないこの世界で1人生きていく自信はない。お金だって減るのは不安だ。
けれど二人は私に巻き込まれてしまった被害者なのだ。
誰だって住み慣れた場所を離れたくはないだろうし、ましてや旅を続ける生活なんて不安しか無いだろう。
私は二人の意見を尊重したかった。
「「……」」
ニーナとジャンは互いに視線を合わせ……黙って頷きあうと、ジャンが口を開いた。
「いいえ、それには及びません。俺達はどこまでもリアンナ様についていきますから」
「はい、そうです。逆についてくるなって言われてもついていきますからね」
「ジャン……ニーナ……ありがとう」
まだリアンナとしてこの世界で生きて、たったの2日しか経過していない。けれども今の私にはジャンとニーナは古くからの大切な友人のような存在に思えていた。
「それじゃ、早速次の行動に移るわよ」
立ち上がると、二人を見下ろした。
「次の行動……?」
「何をするのですか?」
「馬車を売るのよ」
「ええっ!? ば、馬車を売るのですか!?」
大声を上げたのは、勿論ジャンだった。
「本気で言ってらっしゃるのですか? 馬車を売るなんて!」
「勿論。あんな目立つ高級馬車なんか、今の私達には必要ないじゃない。もっと庶民的な馬車で十分よ。それに出来れ幌つきの荷馬車がいいかもね。幌付きなら雨風もしのげるし、何より野宿だってできるじゃない。これからは強く、逞しく生きていかなくちゃね」
「の、野宿ですか!? そんな……! 仮にも侯爵令嬢であるリアンナ様がそんなことを言うなんて……!」
ニーナが顔色を変えて私を見る。
……ごめんね、ニーナ。
本物のリアンナはもういない。
私は陽葵。日本人の元OLで、マジシャンの卵なのだから――
何しろ、今の私達の所持金は約2000万ロンになっていたのだ。
「すごいですね〜! まさかこんな大金になるとは思いませんでした!」
「リアンナ様。これくらいあれば、この町に家を1軒買って暮らせますよ!」
テーブルに置かれたコインを前に、ニーナとジャンが興奮している。
確かに2000万ロンなんて大金、私だって手にするのは初めてだ。家を買って暮らしていくことだって可能だろう。
けれど……。
「ねぇ、二人共。少し聞きたいことがあるのだけど、もしかしてこの先もずっとこの町で暮らしていくつもり?」
「え?」
「それは……」
言葉に詰まるジャンとニーナ。
「私は、もうこの町には残りたくない。だって、この土地はマルケロフ家の領地なんでしょう? 虐待したり、毒薬を渡して自殺を勧めるような家族がいるような場所で、私は暮らしたくない。大体、二度と戻ってくるなと言われているし……。いつまでもこの町に留まっていれば、いつかは父や兄に見つかってしまう可能性があるでしょ?」
「リアンナ様……」
「確かにそうですね……」
神妙そうな顔になるニーナとジャン。
「だから私、この町を出てマジックを披露しながら旅に出ようと考えているの。それで自分の住みたい場所を見つけたら、そこで暮らしてみるのもいいかもしれないし」
マジックをしながら、旅を続ける……実を言うと、自分が密かに思い描いていた夢だったのだ。
「だけど、これ以上私のことで二人を巻き込みたくはないの。だから、もし二人はここに残りたいなら、遠慮なく言って。お金も退職金代わりに半分あげるから」
正直な話、右も左も分からないこの世界で1人生きていく自信はない。お金だって減るのは不安だ。
けれど二人は私に巻き込まれてしまった被害者なのだ。
誰だって住み慣れた場所を離れたくはないだろうし、ましてや旅を続ける生活なんて不安しか無いだろう。
私は二人の意見を尊重したかった。
「「……」」
ニーナとジャンは互いに視線を合わせ……黙って頷きあうと、ジャンが口を開いた。
「いいえ、それには及びません。俺達はどこまでもリアンナ様についていきますから」
「はい、そうです。逆についてくるなって言われてもついていきますからね」
「ジャン……ニーナ……ありがとう」
まだリアンナとしてこの世界で生きて、たったの2日しか経過していない。けれども今の私にはジャンとニーナは古くからの大切な友人のような存在に思えていた。
「それじゃ、早速次の行動に移るわよ」
立ち上がると、二人を見下ろした。
「次の行動……?」
「何をするのですか?」
「馬車を売るのよ」
「ええっ!? ば、馬車を売るのですか!?」
大声を上げたのは、勿論ジャンだった。
「本気で言ってらっしゃるのですか? 馬車を売るなんて!」
「勿論。あんな目立つ高級馬車なんか、今の私達には必要ないじゃない。もっと庶民的な馬車で十分よ。それに出来れ幌つきの荷馬車がいいかもね。幌付きなら雨風もしのげるし、何より野宿だってできるじゃない。これからは強く、逞しく生きていかなくちゃね」
「の、野宿ですか!? そんな……! 仮にも侯爵令嬢であるリアンナ様がそんなことを言うなんて……!」
ニーナが顔色を変えて私を見る。
……ごめんね、ニーナ。
本物のリアンナはもういない。
私は陽葵。日本人の元OLで、マジシャンの卵なのだから――