無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
1章 1 ここはどこ?
リーン
リーン……
耳もとで虫の鳴き声が聞こえてくる。
頬や首周をひんやりした何かが掠っている。
「う〜ん……」
ゆっくり目を開けると辺りは暗い。眼前では草がさわさわと風に揺られている。
「え? 草!?」
どうやら私は草の生え茂った地面の上にうつ伏せで倒れているようだ。
慌てて飛び起き、さらに驚く。
「え……? な、何……この姿……」
今の私はまるで中世貴族が着るようなドレスを着用しているのだ。
月明かりに照らされた黄金色に輝くようなドレスは、贅を尽くしたデザインをしている。
「何で私……こんなドレス着ているの?」
確か、ジャケットにパンツスタイルだったはずなのに?
あたりの様子を伺うために立ち上がろうとし……「ゴホッ」とむせてしまった。
「く、苦しい……。もしや、コルセットというもので身体を締め付けられているのかな……? うん? 何だか口元が生温かいな」
そういえば、先程咳き込んだ時に鉄臭い何かを吐き出してしまった気がする。
手の甲で口元を拭い、思わず悲鳴を上げてしまった。
「ヒャアアアアアッ!?」
何と、手の甲にべっとりと血がついていたからだ。
「血……血っ!?」
よく見ると、私が倒れていた部分にも点々と血がついている。
その瞬間、トラックにはねられた記憶が蘇ってきた。
「そうだった……横断歩道を歩いていたら、トラックが脇から突っ込んできて……こって何処なの?」
私はアスファルトの地面に倒れたはず。それなのに、今立っているのは草が生えた地面の上。横断歩道も無ければ高層ビル群も無い。少し離れた先には松明に揺られた美しい城が建っている。
まるでヨーロッパにあるような古城だ。
「すごい……お城だ……本物なんか見るのは初めてだわ!」
思わず興奮してしまった。
どうせ、ここにいても何も始まらない。
今の自分の状況を確認するには、城に行くべきだろう。第一、今の私はドレスを着ている。誰も私を怪しむ人などいないはず。
「それじゃ城に行ってみようかな」
一歩踏み出したところで、何か硬い物を踏みつけた感覚に気付いた。
「え? 何?」
ドレスの裾をまくって足元を見てみると、美しい装飾が施されたハイヒールの真下に小瓶が転がっている。
「瓶……?」
不思議に思って拾い上げてみると、小瓶の中身は空になっていた。
「空……? 一体中に何が入っていたんだろう?」
小瓶を月明かりにかざしてみたところで、何も分からない。
そのとき、一瞬嫌な考えが浮かんだ。
「まさか瓶の中身が毒で、その毒を飲み干して倒れていた……とかじゃないよね〜……?」
誰に言うともなしに、呟き……背筋がゾクリと寒くなった。
「アハハハハハ……寒いのは、きっと夜風のせいね。それじゃ、とりあえず城に入ってみましょう」
そして私は歩きにくいことこの上ない重いドレスに、足元のおぼつかないヒールで城へ向かう第一歩を踏み出した。
「大丈夫、城へ行けばきっと色々な事情が分かってくるはずよ……」
不安な気持ちを押し殺し、自分に言い聞かせながら城へ向かった。
――しかし。
城へ行けば色々明らかになるだろうと思っていたのだが……私は増々混乱することになるのだった――
リーン……
耳もとで虫の鳴き声が聞こえてくる。
頬や首周をひんやりした何かが掠っている。
「う〜ん……」
ゆっくり目を開けると辺りは暗い。眼前では草がさわさわと風に揺られている。
「え? 草!?」
どうやら私は草の生え茂った地面の上にうつ伏せで倒れているようだ。
慌てて飛び起き、さらに驚く。
「え……? な、何……この姿……」
今の私はまるで中世貴族が着るようなドレスを着用しているのだ。
月明かりに照らされた黄金色に輝くようなドレスは、贅を尽くしたデザインをしている。
「何で私……こんなドレス着ているの?」
確か、ジャケットにパンツスタイルだったはずなのに?
あたりの様子を伺うために立ち上がろうとし……「ゴホッ」とむせてしまった。
「く、苦しい……。もしや、コルセットというもので身体を締め付けられているのかな……? うん? 何だか口元が生温かいな」
そういえば、先程咳き込んだ時に鉄臭い何かを吐き出してしまった気がする。
手の甲で口元を拭い、思わず悲鳴を上げてしまった。
「ヒャアアアアアッ!?」
何と、手の甲にべっとりと血がついていたからだ。
「血……血っ!?」
よく見ると、私が倒れていた部分にも点々と血がついている。
その瞬間、トラックにはねられた記憶が蘇ってきた。
「そうだった……横断歩道を歩いていたら、トラックが脇から突っ込んできて……こって何処なの?」
私はアスファルトの地面に倒れたはず。それなのに、今立っているのは草が生えた地面の上。横断歩道も無ければ高層ビル群も無い。少し離れた先には松明に揺られた美しい城が建っている。
まるでヨーロッパにあるような古城だ。
「すごい……お城だ……本物なんか見るのは初めてだわ!」
思わず興奮してしまった。
どうせ、ここにいても何も始まらない。
今の自分の状況を確認するには、城に行くべきだろう。第一、今の私はドレスを着ている。誰も私を怪しむ人などいないはず。
「それじゃ城に行ってみようかな」
一歩踏み出したところで、何か硬い物を踏みつけた感覚に気付いた。
「え? 何?」
ドレスの裾をまくって足元を見てみると、美しい装飾が施されたハイヒールの真下に小瓶が転がっている。
「瓶……?」
不思議に思って拾い上げてみると、小瓶の中身は空になっていた。
「空……? 一体中に何が入っていたんだろう?」
小瓶を月明かりにかざしてみたところで、何も分からない。
そのとき、一瞬嫌な考えが浮かんだ。
「まさか瓶の中身が毒で、その毒を飲み干して倒れていた……とかじゃないよね〜……?」
誰に言うともなしに、呟き……背筋がゾクリと寒くなった。
「アハハハハハ……寒いのは、きっと夜風のせいね。それじゃ、とりあえず城に入ってみましょう」
そして私は歩きにくいことこの上ない重いドレスに、足元のおぼつかないヒールで城へ向かう第一歩を踏み出した。
「大丈夫、城へ行けばきっと色々な事情が分かってくるはずよ……」
不安な気持ちを押し殺し、自分に言い聞かせながら城へ向かった。
――しかし。
城へ行けば色々明らかになるだろうと思っていたのだが……私は増々混乱することになるのだった――