無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
1章 19 不思議な店
レンガ造りの建物の前に到着すると、私は迷わず目の前の扉を開けた。
カランカランとドアベルを鳴り響かせながら店内に足を踏み入れ、思わず目を見開く私。
「え……? な、何この店……?」
外から見た状態ではそれほど大きな店には思えなかったのに、内部はとても広い空間になっていた。
店内には様々な楽器が並べられ、中でも一番目を引かれた楽器は……。
「そ、そんな……嘘でしょう?」
驚くべきことに、恐らくこの世界ではありえない楽器……エレキギターが置かれていたのだ。
「本物……なのかな?」
震えながらエレキギターに近づき、手にとって見る。
「間違いない……エレキギターだ……」
わたしはエレキギターは弾いたことが無い。無いけれどもテレビで見たことがあるし、楽器屋で見たことだってある。
そんな、あり得ない……。だって、この世界には電気が通っていないのに?
スピーカーだって無い世界じゃない!
「信じられない……ん? えぇええっ!! 嘘っ!!」
エレキギターの奥には、エレクトーンまで売られているのだ。
「こ、これって夢……夢なの!?」
試しに右頬をつねってみる。
「痛っ!!」
しっかり痛みを感じる……ということは夢ではない。
そのときになって、はじめて気付いた。
「あれ? ニーナ、ジャン?」
一緒に来ていたと思っていたのに、辺りを見渡しても二人の姿はない。それどころかこれだけ広い店内で、お客も店員の姿すら見当たらない。
「二人共……店に入ってこなかったの……?」
――そのとき。
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
「ひゃああああっ!?」
いきなり背後から声をかけられ、思わず悲鳴をあげてしまった。
「な、何っ!?」
振り向くと、白い口ひげをはやした男性……まるでサンタを彷彿とさせる男性が真後ろに立っているではないか。
「……え? あ、あの……」
「いやぁ〜これはすみません。いきなり声をかけて驚かせてしまったようですな?」
「い、いえ……こちらこそ大きな声をあげてしまってすみません……」
「それでお客様。一体どのような楽器をご所望ですか?」
ニコニコしながら声をかけてくるサンタもどきの店主。この店のことで色々突っ込みたいことがあるけれども、あまりにも自然な接客に尋ねる気が失せてしまった。
「あの〜……ウクレレを探しているのですが……売ってますか?」
期待半分、不安半分で尋ねてみる。
まぁ多分エレキギターやエレクトーンまで販売しているのだから、売ってる可能性はあるけれども……。
「ええ、売ってますよ」
「え!! 売ってるんですか!?」
自分で尋ねておいて、驚いてしまう。
「ええ、各種色々な楽器を取り扱っています。ウクレレは真後ろに置いてあります」
「え?」
振り向くといつの間にか、様々なウクレレが売っている。その中には私が使っていたのと同じウクレレもあった。
「これ……これをください!」
馴染み深いウクレレを指差すと、サンタもどき店主さんが手にとって差し出してきた。
「どうぞ、お客様」
「ありがとうございます……あの、おいくらですか?」
「お代なら結構ですよ」
その言葉に耳を疑う。
「え? で、ですが……」
「良いんですよ。久しぶりにお客様がいらしてくださったのですからサービスです」
「久しぶりなら、尚更お支払いしないと……」
そんな状態でタダで貰えるはずもない。
「いいえ。私の気持ちとして受け取って下さい。それより早く戻られたほうが良いですよ。お連れの人が捜しているでしょうから」
「え……? そ、そうだった!」
ニーナとジャンのことを忘れていた。
「あの扉を出れば外に出られますから」
サンタもどきの店主さんに促され、私は再度尋ねた。
「あの……本当に頂いてよろしいのですか……?」
「ええ、勿論です。何しろ、あなたは特別なお客様ですからね」
「特別……?」
一体どういうことだろう?
「はい、特別です。御来店ありがとうございました」
ニコニコ笑顔で私を見つめる店主さん。
「こちらこそ、ありがとうございます!」
ウクレレを胸に抱きしめ、私は店の扉を開けて外へ出た――
カランカランとドアベルを鳴り響かせながら店内に足を踏み入れ、思わず目を見開く私。
「え……? な、何この店……?」
外から見た状態ではそれほど大きな店には思えなかったのに、内部はとても広い空間になっていた。
店内には様々な楽器が並べられ、中でも一番目を引かれた楽器は……。
「そ、そんな……嘘でしょう?」
驚くべきことに、恐らくこの世界ではありえない楽器……エレキギターが置かれていたのだ。
「本物……なのかな?」
震えながらエレキギターに近づき、手にとって見る。
「間違いない……エレキギターだ……」
わたしはエレキギターは弾いたことが無い。無いけれどもテレビで見たことがあるし、楽器屋で見たことだってある。
そんな、あり得ない……。だって、この世界には電気が通っていないのに?
スピーカーだって無い世界じゃない!
「信じられない……ん? えぇええっ!! 嘘っ!!」
エレキギターの奥には、エレクトーンまで売られているのだ。
「こ、これって夢……夢なの!?」
試しに右頬をつねってみる。
「痛っ!!」
しっかり痛みを感じる……ということは夢ではない。
そのときになって、はじめて気付いた。
「あれ? ニーナ、ジャン?」
一緒に来ていたと思っていたのに、辺りを見渡しても二人の姿はない。それどころかこれだけ広い店内で、お客も店員の姿すら見当たらない。
「二人共……店に入ってこなかったの……?」
――そのとき。
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
「ひゃああああっ!?」
いきなり背後から声をかけられ、思わず悲鳴をあげてしまった。
「な、何っ!?」
振り向くと、白い口ひげをはやした男性……まるでサンタを彷彿とさせる男性が真後ろに立っているではないか。
「……え? あ、あの……」
「いやぁ〜これはすみません。いきなり声をかけて驚かせてしまったようですな?」
「い、いえ……こちらこそ大きな声をあげてしまってすみません……」
「それでお客様。一体どのような楽器をご所望ですか?」
ニコニコしながら声をかけてくるサンタもどきの店主。この店のことで色々突っ込みたいことがあるけれども、あまりにも自然な接客に尋ねる気が失せてしまった。
「あの〜……ウクレレを探しているのですが……売ってますか?」
期待半分、不安半分で尋ねてみる。
まぁ多分エレキギターやエレクトーンまで販売しているのだから、売ってる可能性はあるけれども……。
「ええ、売ってますよ」
「え!! 売ってるんですか!?」
自分で尋ねておいて、驚いてしまう。
「ええ、各種色々な楽器を取り扱っています。ウクレレは真後ろに置いてあります」
「え?」
振り向くといつの間にか、様々なウクレレが売っている。その中には私が使っていたのと同じウクレレもあった。
「これ……これをください!」
馴染み深いウクレレを指差すと、サンタもどき店主さんが手にとって差し出してきた。
「どうぞ、お客様」
「ありがとうございます……あの、おいくらですか?」
「お代なら結構ですよ」
その言葉に耳を疑う。
「え? で、ですが……」
「良いんですよ。久しぶりにお客様がいらしてくださったのですからサービスです」
「久しぶりなら、尚更お支払いしないと……」
そんな状態でタダで貰えるはずもない。
「いいえ。私の気持ちとして受け取って下さい。それより早く戻られたほうが良いですよ。お連れの人が捜しているでしょうから」
「え……? そ、そうだった!」
ニーナとジャンのことを忘れていた。
「あの扉を出れば外に出られますから」
サンタもどきの店主さんに促され、私は再度尋ねた。
「あの……本当に頂いてよろしいのですか……?」
「ええ、勿論です。何しろ、あなたは特別なお客様ですからね」
「特別……?」
一体どういうことだろう?
「はい、特別です。御来店ありがとうございました」
ニコニコ笑顔で私を見つめる店主さん。
「こちらこそ、ありがとうございます!」
ウクレレを胸に抱きしめ、私は店の扉を開けて外へ出た――