無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

1章 22 次の場所へ向けて

 宿屋に戻ると、早速私たちは部屋に集まってお金がいくら集まったか確認して見ることにした。

「す、すごい! 25万ロンありますよ! 私の賃金と同額です!」

「何だって? ニーナ! お前そんなに貰ってたのか!? 俺なんか23万5千ロンだぞ!」

細かいことで文句を言ってくるジャン。

「ええ、そうでしょうとも。私はリアンナ様の専属メイド手当として1万5千ロン上乗せしていただいていましたから」

「へ~そうなの? 手当って大きいわね」

妙な事で共感してしまう。

「うう……俺だって特別手当を貰いたかった……」

「大丈夫だって。これからは私が直接2人を雇用するんだから稼ぎが増えれば増えた分だけ、お給料アップしてあげるから」

嘆くジャンの肩を叩く私。

「本当ですか!? その話、嘘ではありませんよね?」

「ジャン! いい加減にしなさい! 私たちのお給料なんて後回しでしょう!? まずはこれから先の生活を考えないといけないのだから。何処かで移住先を見つけて、そこで安定した生活を送る。そうですよね? リアンナ様」

「う~ん……まぁ、そうよね」

ニーナのことに頷くも、私はこのままずっと放浪生活を続けても良いような気がしていた。
世界中をこの足で見て回ってみたいが、ニーナはそんな生活は望んでいないのかもしれない。

でもいずれにしろ、ここはまだマルケロフ家の領地。
なるべく早くこの地を去った方が良いだろう。

「それじゃ食糧や水。必要な日用品を買い集めたら、次の町へ向けて出発しましょう」

「「はい、リアンナ様」」

そして、私たちは出発の準備を始めた――



****

――13時

昼食を終えた私たちは宿屋の裏手に止めた荷馬車に荷物を運びこんでいた。
マジック道具は勿論、水や食料。
他に着替えなどの日用品を詰め込むと、荷馬車は半分くらいが荷物で埋め尽くされていた。

「それにしても結構な荷物になりましたね~」

荷馬車に積み込んだ荷物を見て、ジャンがため息をつく。

「ね? だから荷馬車に変えて正解だったでしょう?」

そのとき、背後で視線を感じて振り返った。

「……」

けれど、周囲には私たちしかいない。木々や建物が見えるだけだ。

「どうかしましたか? リアンナ様」

ニーナが尋ねてくる。

「うん……何だか、今誰かに見られていた気がするんだけど……」

「え? 本当ですか?」

「私たちは何も感じませんでしたけど?」

ジャンとニーナが首を傾げる。

「そうなんだよね……でも、マジックをしている時も視線を感じたし……」

すると、私の言葉に2人は一瞬ぽかんとした表情を浮かべ……。

「な、何言ってるんですか? 視線を感じて当然じゃないですか! ハハハッ!」

「そうですよ。大勢の前でマジックを披露したのだから、視線を感じるのは当然じゃありませんか。 フフフフ」

ジャンとニーナはおかしくてたまらないと言わんばかりに笑う。

「そうだよね? 皆に見られていたのだから、視線を感じて当然だよね? あははは……」

2人が笑うので、私も笑ってごまかす。
言えない……とてもではないけれど、2人には言えない。

上から視線を感じていたなんて、話2人には絶対に口が裂けても!
しかもあの視線……恐らく同じ人物に違いない。

ひょっとすると、私が領地を抜け出すまで見届けるように言われたマルケロフ家の使いのものだろうか? 
だとしたら領地を出れば、時折感じた視線も消えるはず。
そこでジャンに尋ねてみることにした。

「ねぇ、ジャン。次の町はどれくらいで到着しそう?」

「あ、それが次は町ではなくて村ですね。 イナクという村です。恐らく夕方までには到着出来そうです」

ジャンが地図を見ながら教えてくれた。

「イナクはマルケロフ家の領地なの?」

「はい、まだ領地ですね。あ、でもそこを抜ければ終わりです」

「本当!? だとしたら、急いで向かいましょう!」

急いで荷馬車に乗り込むと、ニーナも続いた。

「そうですね、何事も早目が肝心ですね?」

「分かりました。では荷馬車に乗りましょう」

ジャンは御者台に座ると手綱を握りしめる。


「それじゃ、出発しますよ」

ジャンの言葉に私たちは頷き、荷馬車はガラガラ音を立てて進み始めた――





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