無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
1章 2 非難の目、そして罵声
私が倒れていた場所はどうやら城の中庭のようだった。
城に近づいてみると大きな掃き出し窓が開放されており、中の様子が見えた。
パーティーでも開いているのだろうか?
中ではまるで映画のワンシーンのような光景が繰り広げられていた。
広々とした大ホールに集まる人々は豪華なドレス姿、男性たちも中世映画に出てくる貴族のような衣装を着ているではないか。
しかも全員、彫りの深い外国人の顔つきをしている。
「すごい……なんてリアルな夢なんだろう……?」
目の前の光景があまりにも非現実過ぎて、頭が追いつかない。
だからきっとこれは夢の中に違いない……と決めつけることにした。
「よし、夢なら構わないよね」
窓から城の中へ入っていくと、人々が一斉に私に注目する。
「え……? い、一体何よ……?」
女性も男性も皆が軽蔑・非難の目を向け、何やらコソコソと話をしている。
「……よくも堂々と戻って来れたものね……」
「さすがは悪名高い令嬢だ……」
「いい神経をしているわね……」
どうやら私のことを話しているようだが、ここは夢の世界なのだから構うことは無いだろう。
それよりも私が今、一番気になっているのは……。
「すごい……なんて御馳走なの?」
会場に置かれた立食テーブルに釘付けになっていた。
フラフラと引き寄せられるようにテーブルに近づいてみれば、まるで一流ホテルのビュッフェのような料理がずらりと並べられている。
「これ……食べてもいいんだよね?」
早速手近な場所に置かれた皿とトングを片手に先ずは肉料理を口にしてみる。
「お、美味しい……!」
口に入れた途端にジューシーな肉汁が口に広がる。
この柔らかさ……味付け……もう最高!!
その後も様々な料理を味わっていると、不意にホールの中心でざわめきが起こった。
「何かあったのかな……?」
何があったのか多少気にはなったものの、今一番重要なのは目の前の料理を堪能することだった。
「あ、あのワイン美味しそう!」
私の目の前をワインが乗ったトレーを手にしたボーイが通り過ぎていく。
「すみません!」
大きな声で呼びかけると、ギョッとした様子でボーイが足を止める。
「あ、あの何か御用でしょうか?」
「そこのワインを下さい」
「え? ワインですね? どうぞ」
ボーイは震えながら私にワインを差し出してくる。何故、そこまで怯えた様子を見せているのだろう?
不思議に思いながら、私は笑顔でワインを受け取った。
「どうもありがとうございます」
「ヒッ! わ、笑った……!」
「え?」
「し、失礼いたします!」
怯えたボーイは逃げるように去って行った。
「全く何だって言うのよ……?」
首を傾げながらワインを口にしてみる。
「……美味しい! なんて美味しいの!」
きっと相当高級なワインに違いない。
自分の夢の都合の良さに、すっかり満足していたそのとき。
「リアンナ・マルケロフ!! まだこの場にいたのか!?」
鋭い男性の声が背後で聞こえた。
一体誰に対して怒っているのだろう? まぁどうせ私には関係ないことだろうし……。
「貴様! 無視するとは良い度胸だな!」
構わずに、ワインを口にしていると突然左腕を強くつかまれ無理やり身体の向きを変えさせられた。
「痛っ!? な、何!?」
はずみでグラスを床に落としてしまった。
バリーンッ!!
派手な音を立てて粉々に砕け散るグラス。
「あ! グ、グラスが!」
腕を掴まれたまま床に砕け散ったグラスを見下ろす。
「グラスなどどうでも良い!!」
更に腕をねじ上げられる。
「い、痛い!! は、離して!!」
叫びながら相手を見ると、ブロンドの髪に青い瞳の美しい青年が立っていた。
しかも怒りとも憎しみとも取れる目で私を睨みつけている。
「え……?」
誰? この男性は……? 全く身に覚えがない。
ズキズキする腕の痛みを堪えながら、男性の顔を見つめ……首を傾げた。
「何だ? その訳が分からないといった態度は?」
青年は私の腕を乱暴に離すと、冷たい声で話しかけてくる。いつの間にか周囲は人だかりができている。
「レオポルト様……」
彼の背後から、銀色の髪の可愛らしい女性が姿を現した。
「どうしたのだ? アンジェリカ」
「あまり乱暴なことをリアンナ様になさらないで下さい」
「アンジェリカ……なんと、そなたは優しい女性なのだ。ずっとひどい嫌がらせをあの女に受けてきたというのに」
「え?」
青年の言葉に耳を疑う。
この私が? 彼女に嫌がらせをしてきた?
しかも私のこと……リアンナ・マルケロフって呼んでいたけど……?
だいたい、この2人は誰なのだろう?
何だかすごく怒っているみたいだけど、とりあえず尋ねてみたほうがいいよね?
「あの……失礼ですが……どちら様でしたっけ?」
「何だって……?」
「え……?」
私の言葉に、青年と女性が驚いたかの様子で目を見開く。
しかし次の瞬間――
「貴様! ふざけるな!」
激しく怒鳴りつけられた。
「良いか!? 私が貴様を屋敷に迎えに行かなかった段階で、すでに王妃候補から外れたことを理解しろ! なのに図々しくも1人でこのパーティーに参加し、更にアンジェリカを傷つけようとしただろう! 本来なら王室に対する反逆罪でお前を投獄してやるところだが、仮にもお前はマルケロフ侯爵の一員! せめてもの情だ! 即刻ここから出ていけ! そして二度とこの城に足を踏み入れるな!!」
「ええっ!?」
何が何だか理由が分からぬまま、私は王子と思しき青年に出入り禁止を言い渡されてしまった――
城に近づいてみると大きな掃き出し窓が開放されており、中の様子が見えた。
パーティーでも開いているのだろうか?
中ではまるで映画のワンシーンのような光景が繰り広げられていた。
広々とした大ホールに集まる人々は豪華なドレス姿、男性たちも中世映画に出てくる貴族のような衣装を着ているではないか。
しかも全員、彫りの深い外国人の顔つきをしている。
「すごい……なんてリアルな夢なんだろう……?」
目の前の光景があまりにも非現実過ぎて、頭が追いつかない。
だからきっとこれは夢の中に違いない……と決めつけることにした。
「よし、夢なら構わないよね」
窓から城の中へ入っていくと、人々が一斉に私に注目する。
「え……? い、一体何よ……?」
女性も男性も皆が軽蔑・非難の目を向け、何やらコソコソと話をしている。
「……よくも堂々と戻って来れたものね……」
「さすがは悪名高い令嬢だ……」
「いい神経をしているわね……」
どうやら私のことを話しているようだが、ここは夢の世界なのだから構うことは無いだろう。
それよりも私が今、一番気になっているのは……。
「すごい……なんて御馳走なの?」
会場に置かれた立食テーブルに釘付けになっていた。
フラフラと引き寄せられるようにテーブルに近づいてみれば、まるで一流ホテルのビュッフェのような料理がずらりと並べられている。
「これ……食べてもいいんだよね?」
早速手近な場所に置かれた皿とトングを片手に先ずは肉料理を口にしてみる。
「お、美味しい……!」
口に入れた途端にジューシーな肉汁が口に広がる。
この柔らかさ……味付け……もう最高!!
その後も様々な料理を味わっていると、不意にホールの中心でざわめきが起こった。
「何かあったのかな……?」
何があったのか多少気にはなったものの、今一番重要なのは目の前の料理を堪能することだった。
「あ、あのワイン美味しそう!」
私の目の前をワインが乗ったトレーを手にしたボーイが通り過ぎていく。
「すみません!」
大きな声で呼びかけると、ギョッとした様子でボーイが足を止める。
「あ、あの何か御用でしょうか?」
「そこのワインを下さい」
「え? ワインですね? どうぞ」
ボーイは震えながら私にワインを差し出してくる。何故、そこまで怯えた様子を見せているのだろう?
不思議に思いながら、私は笑顔でワインを受け取った。
「どうもありがとうございます」
「ヒッ! わ、笑った……!」
「え?」
「し、失礼いたします!」
怯えたボーイは逃げるように去って行った。
「全く何だって言うのよ……?」
首を傾げながらワインを口にしてみる。
「……美味しい! なんて美味しいの!」
きっと相当高級なワインに違いない。
自分の夢の都合の良さに、すっかり満足していたそのとき。
「リアンナ・マルケロフ!! まだこの場にいたのか!?」
鋭い男性の声が背後で聞こえた。
一体誰に対して怒っているのだろう? まぁどうせ私には関係ないことだろうし……。
「貴様! 無視するとは良い度胸だな!」
構わずに、ワインを口にしていると突然左腕を強くつかまれ無理やり身体の向きを変えさせられた。
「痛っ!? な、何!?」
はずみでグラスを床に落としてしまった。
バリーンッ!!
派手な音を立てて粉々に砕け散るグラス。
「あ! グ、グラスが!」
腕を掴まれたまま床に砕け散ったグラスを見下ろす。
「グラスなどどうでも良い!!」
更に腕をねじ上げられる。
「い、痛い!! は、離して!!」
叫びながら相手を見ると、ブロンドの髪に青い瞳の美しい青年が立っていた。
しかも怒りとも憎しみとも取れる目で私を睨みつけている。
「え……?」
誰? この男性は……? 全く身に覚えがない。
ズキズキする腕の痛みを堪えながら、男性の顔を見つめ……首を傾げた。
「何だ? その訳が分からないといった態度は?」
青年は私の腕を乱暴に離すと、冷たい声で話しかけてくる。いつの間にか周囲は人だかりができている。
「レオポルト様……」
彼の背後から、銀色の髪の可愛らしい女性が姿を現した。
「どうしたのだ? アンジェリカ」
「あまり乱暴なことをリアンナ様になさらないで下さい」
「アンジェリカ……なんと、そなたは優しい女性なのだ。ずっとひどい嫌がらせをあの女に受けてきたというのに」
「え?」
青年の言葉に耳を疑う。
この私が? 彼女に嫌がらせをしてきた?
しかも私のこと……リアンナ・マルケロフって呼んでいたけど……?
だいたい、この2人は誰なのだろう?
何だかすごく怒っているみたいだけど、とりあえず尋ねてみたほうがいいよね?
「あの……失礼ですが……どちら様でしたっけ?」
「何だって……?」
「え……?」
私の言葉に、青年と女性が驚いたかの様子で目を見開く。
しかし次の瞬間――
「貴様! ふざけるな!」
激しく怒鳴りつけられた。
「良いか!? 私が貴様を屋敷に迎えに行かなかった段階で、すでに王妃候補から外れたことを理解しろ! なのに図々しくも1人でこのパーティーに参加し、更にアンジェリカを傷つけようとしただろう! 本来なら王室に対する反逆罪でお前を投獄してやるところだが、仮にもお前はマルケロフ侯爵の一員! せめてもの情だ! 即刻ここから出ていけ! そして二度とこの城に足を踏み入れるな!!」
「ええっ!?」
何が何だか理由が分からぬまま、私は王子と思しき青年に出入り禁止を言い渡されてしまった――