無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

3章 10 握手しましょう

 私達は新しく仲間? に加わったカインと一緒に夕食のテーブルを囲んで今後の予定を話し合っていた。

「え? 教会ですか?」

スープを飲んでいたカインが手を止めて尋ねてきた。

「ええ、そうなの。明日、教会の側でマジックショーを披露しようと考えているの。ほら。何しろ『イナク』の村の人たちから私は聖女だと勘違いされて、大騒ぎされちゃったじゃない? だから咄嗟にお供を連れて巡業の旅をしている最中だって嘘をついてしまったのよ」

「覗き見をしていたのなら、当然あなたはそのことを知っていますよね?」

カインのことを良く思っていないのだろう。ジャンの言葉には何処かトゲがある。

「はい、知っています。確かに、あの力を見れば誰でもリアンナ様のことを聖女だと思うでしょうね。実際に僕もそう思っていますから」

そしてカインはジッと私を見る。

「ちょっと! あなたは殿下の手下なのですよね? まさかリアンナ様に近づいて、色々聞き出して伝書鳩で知らせるつもりじゃないですよね?」

ニーナもどうやら、カインを不審に思っているようだ。

「い、いえ! そんなことはしていません! 僕はただ、殿下にリアンナ様の居場所をオスカーに託しただけですから」

「それをそのまま信じろっていうんですか?」

カインの言葉にジャンはさらに疑わしい目を向ける。う〜ん……どうにもまだ2人は疑いの目を向けているようだ。

「確かに、黙ってつけていたことは申し訳ないと思っていますが……」

何だか良くない雰囲気になってきた。ここは私が終わらせなければ。

「はい! 皆、ここまでにしましょう!」

明るい声でパチンと手を叩くと、3人の視線が私に向けられる。

「2人の言う通り、確かにカインは殿下に命じられて私達を監視していたわ。でも裏を返せば、もし私達に危険が迫った時は助けようと思っていたわけでしょう?」

現に鳩の餌の話を宿屋でしたとき、カインは助言してくれたのだから。

「はい、 勿論その通りです! これでも殿下の護衛騎士、腕には自信があります」

すると私の言葉が嬉しかったのか、カインが大きく頷く。

「まぁ、確かにそれはそうかもしれませんけど……ジャンだけでは頼りになりそうにないですからね」

ニーナがチラリとジャンを見る。

「た、確かに俺はただの庭師だけど……その気になれば盗賊の1人や2人……」

ただの庭師兼、今は御者であるジャンの声がしりすぼみになる。やはりカインがいてくれれば心強い。

「そういうこと。これから旅の仲間として一緒に行動するのだから4人で仲良くやっていきましょうよ。まずは3人で握手しましょうか?」

「ええ!? 握手ですか?」

「そこまでする必要ありますか?」

ジャンとニーナは困った表情を浮かべるも、カインは前向きだ。

「そうですね、それでは2人とも。これからよろしく」

笑顔でまずカインはジャンに右手を差し伸べた。

「わ、分かりましたよ……」

私の視線が気になったのか、ジャンは渋々手を差し出して2人は私の目の前で握手を交わす。
次にカインはニーナと握手を交わすと、私に視線を移した。

「リアンナ様。町の案内でしたら僕にお任せ下さい。僕は今まで殿下の護衛騎士として領地視察には必ず同行していたので道案内出来ますし、顔も聞きますから」

「え? それは俺の仕事……」

ジャンが何か言いかけていたが、カインの言葉に頷いた。

「そうね。それではカインに案内をお願いするわ。それじゃ、早速食後に教会の場所を案内してもらえる?」

「はい、勿論です」


そして夕食後、私達はカインの案内で教会へ向かった――
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