無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
3章 11 荷馬車の上で、話し合い
――19時半
私達は荷馬車に乗って「ユズ」の町にある教会を目指していた。
「とうとう、リアンナ様の護衛どころか御者の仕事までやってのけるなんて……」
ジャンが御者代に座って手綱を握りしめているカインの後ろ姿を見てため息をつく。
「あら? 何よ、ジャン。この間まで自分はただの庭師だって言ってたくせに、御者の仕事が気に入ってしまったの?」
ニーナがからかうようにジャンに尋ねた。
「な、何言ってるんだよ! そんなはず無いだろう? ただ俺だってもっとリアンナ様の役に立てるのにって思っただけだからな!」
何処かムキになった様子でジャンは言い返すと、私をちらりと見る。
「大丈夫よ、ジャンは十分役に立ってくれてるから。むしろ2人には感謝してるんだよ? だって何もかも失ってしまった私についてきてくれてるんだから。しかもあてのない旅だって言うのに」
すると、御者台に座っていたカインが驚いた様子で振り向いた。
「え? まさか、どこへ行くか決めていなかったのですか!?」
「そうよ。あれ? 言ってなかったっけ?」
「ええ、聞いていませんよ。初耳です。だけど、行くあてがない旅だったなんて……」
カインは何処かショックを受けているように見えた。
そこへ、何故かカインに敵意を向けるジャンが話に加わってくる。
「何ですか? ひょっとしてこの国を出た後も、俺達の行く先を殿下に報告するつもりですか? 大体、リアンナ様が家族から縁を切られて追い出されてしまった原因は殿下にあるんですよ? 殿下がリアンナ様を選んで下さっていれば、そもそもこんなことにはならなかったのですから」
「それは……そうなのですが……」
申し訳無さそうにカインが目を伏せる。その姿を見ていると、何だか気の毒になってきた。
「落ち着いて、ジャン。カインを責めても仕方ないわ。次期王妃に選ばなかったのは殿下、それに私を追い出したのは家族なのだから」
「リアンナ様……」
ジャンはまだ気に入らないのか、唇を尖らせている。
「それにね、私はこれで良かったと思っているんだから。次期王妃なんて、私には荷が重くて無理無理。自由気ままに生きるのが一番だってば」
「確かに今のリアンナ様は屋敷にいたときよりも、何だか幸せそうに見えますね」
ニーナが頷く。
「当然よ。だって今、本当に幸せなんだもの」
大体、元のリアンナがどう思っていたかは不明だが、私自身は殿下のような男性など御免だ。いくら王族とは言え、あんなに大衆の面前で恥をかかせるような真似をするのだから。
やはり身分よりも性格だ。男性は優しい人に限る。
それに顔だって、殿下よりもむしろカインの方がはっきり言って私の好みの顔だ。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。リアンナ様」
カインが笑顔で私にお礼を述べてくる。
う〜ん……別に、気付かって言った言葉じゃないんだけどなぁ……。
「御礼なんか言わなくて大丈夫だから」
思わず苦笑してしまう。
「……ですが、この国を出た後の行き先が決まっていないなんて……」
カインが神妙そうな表情でポツリと呟く。
「あ! やっぱり出国した後も、リアンナ様の監視を続けて、殿下に報告する気でいるんだな!?」
再び、ジャンがカインに食って掛かる。
「いえ! そんなまさか! だ、大体僕は殿下の護衛騎士です。何時までお側を離れているわけにもいきませんから」
「それじゃ、やっぱり同行するのは私達がこの国を出るまでの間ですね?」
ニーナの言葉にカインが、笑みを浮かべて頷く。
「ええ……そういう事になりますね」
あれ? 気のせいかな?
何だかカインの顔が寂しげに見えたような気がするのだけど……?
そのとき。
「あ! 皆さん! この町の教会に到着しましたよ!」
カインの言葉に荷馬車の中から顔をのぞかせてみた。
すると町外れの小高い丘の上で、満月を背にした大きな教会が建っていた――
私達は荷馬車に乗って「ユズ」の町にある教会を目指していた。
「とうとう、リアンナ様の護衛どころか御者の仕事までやってのけるなんて……」
ジャンが御者代に座って手綱を握りしめているカインの後ろ姿を見てため息をつく。
「あら? 何よ、ジャン。この間まで自分はただの庭師だって言ってたくせに、御者の仕事が気に入ってしまったの?」
ニーナがからかうようにジャンに尋ねた。
「な、何言ってるんだよ! そんなはず無いだろう? ただ俺だってもっとリアンナ様の役に立てるのにって思っただけだからな!」
何処かムキになった様子でジャンは言い返すと、私をちらりと見る。
「大丈夫よ、ジャンは十分役に立ってくれてるから。むしろ2人には感謝してるんだよ? だって何もかも失ってしまった私についてきてくれてるんだから。しかもあてのない旅だって言うのに」
すると、御者台に座っていたカインが驚いた様子で振り向いた。
「え? まさか、どこへ行くか決めていなかったのですか!?」
「そうよ。あれ? 言ってなかったっけ?」
「ええ、聞いていませんよ。初耳です。だけど、行くあてがない旅だったなんて……」
カインは何処かショックを受けているように見えた。
そこへ、何故かカインに敵意を向けるジャンが話に加わってくる。
「何ですか? ひょっとしてこの国を出た後も、俺達の行く先を殿下に報告するつもりですか? 大体、リアンナ様が家族から縁を切られて追い出されてしまった原因は殿下にあるんですよ? 殿下がリアンナ様を選んで下さっていれば、そもそもこんなことにはならなかったのですから」
「それは……そうなのですが……」
申し訳無さそうにカインが目を伏せる。その姿を見ていると、何だか気の毒になってきた。
「落ち着いて、ジャン。カインを責めても仕方ないわ。次期王妃に選ばなかったのは殿下、それに私を追い出したのは家族なのだから」
「リアンナ様……」
ジャンはまだ気に入らないのか、唇を尖らせている。
「それにね、私はこれで良かったと思っているんだから。次期王妃なんて、私には荷が重くて無理無理。自由気ままに生きるのが一番だってば」
「確かに今のリアンナ様は屋敷にいたときよりも、何だか幸せそうに見えますね」
ニーナが頷く。
「当然よ。だって今、本当に幸せなんだもの」
大体、元のリアンナがどう思っていたかは不明だが、私自身は殿下のような男性など御免だ。いくら王族とは言え、あんなに大衆の面前で恥をかかせるような真似をするのだから。
やはり身分よりも性格だ。男性は優しい人に限る。
それに顔だって、殿下よりもむしろカインの方がはっきり言って私の好みの顔だ。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。リアンナ様」
カインが笑顔で私にお礼を述べてくる。
う〜ん……別に、気付かって言った言葉じゃないんだけどなぁ……。
「御礼なんか言わなくて大丈夫だから」
思わず苦笑してしまう。
「……ですが、この国を出た後の行き先が決まっていないなんて……」
カインが神妙そうな表情でポツリと呟く。
「あ! やっぱり出国した後も、リアンナ様の監視を続けて、殿下に報告する気でいるんだな!?」
再び、ジャンがカインに食って掛かる。
「いえ! そんなまさか! だ、大体僕は殿下の護衛騎士です。何時までお側を離れているわけにもいきませんから」
「それじゃ、やっぱり同行するのは私達がこの国を出るまでの間ですね?」
ニーナの言葉にカインが、笑みを浮かべて頷く。
「ええ……そういう事になりますね」
あれ? 気のせいかな?
何だかカインの顔が寂しげに見えたような気がするのだけど……?
そのとき。
「あ! 皆さん! この町の教会に到着しましたよ!」
カインの言葉に荷馬車の中から顔をのぞかせてみた。
すると町外れの小高い丘の上で、満月を背にした大きな教会が建っていた――