無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
3章 12 献金
「立派な教会ね〜。それに大きな満月が背後にあって、なかなか幻想的な景色だわ。とても素敵じゃないの」
教会を見つめながら思ったままの気持ちを言葉にすると、何故かカインがじっと私をみつめている。
「何? カイン」
「あ、申し訳ございません。リアンナ様がそのような言葉を口にするなんて、少し意外だなと思って」
「意外って、どいうことですか?」
そこへ、ジャンが会話に入ってきた。
「リアンナ様は綺羅びやかな光景が好みだと思っていたんだ。例えば、美しい城の庭園とか……。だから、このような景色を好まれているとは以外だと感じただけですから」
最後の言葉は、私をじっと見つめながら答えるカイン。
「そうですか」
何処かぶっきらぼうに答えるジャン。そして黙ってジャンを見つめているニーナ。
う〜ん……やっぱりジャンはまだカインのことを何処か敵視しているのかもしれない。
やっぱり、御者の仕事を取られてしまった為だろうか?
そこで私はジャンの肩を軽く叩いた。
「ジャン、帰りの道はあなたが御者台に乗って宿屋まで連れて行ってくれる?」
「はい、勿論です! 任せて下さい、リアンナ様!」
私の言葉で元気が出たのか、ジャンが嬉しそうに頷く。
「リアンナ様。場所も確認したことですし、もう宿屋に戻りましょうか?」
ニーナの言葉に、カインは首を振った。
「いえ、教会を訪ねましょう。そして、明日ここで巡業させてもらうように頼むのです。そうすれば、朝からでも始められますよね?」
「だけど、こんな夜分に教会を訪ねるのは失礼じゃないかしら?」
「俺もそう思いますね」
私の言葉に頷くジャン。
「それなら大丈夫です。教会は常に開いています。何故なら一日中困った人たちを受け入れて上げる場所なのですから」
「なるほど……支援施設のような役割も果たしているわけですね」
その話で納得できた。
「それに僕は教会に顔が利きます。殿下のお供で領地の教会は全て訪ねていますから。だからお任せ下さい」
「それは頼もしいですね。なら早速訪ねてみましょう」
ニーナがカインを促し、その様子を腕組みして見つめるジャン。
う〜ん。ニーナとの仲はうまくいきそうだけど、ジャンはまだ時間が掛かりそうだ。出来れば、仲良くなって欲しいのだけどな……。
「では皆さん、行きましょう」
そして私達はカインを先頭に教会へ向かった。
教会の扉の前には呼鈴の紐がぶら下がっていた。
カインは2回紐を引き、少しの間私達はその場で待機していた。
「……おい、やっぱり誰も出てこない。やっぱり寝てるんじゃないのか?」
「しっ!」
ジャンがニーナの耳もとに小声で囁き、ニーナがそれを咎める。
その時。
「どうもお待たせいたしました」
白いローブを羽織ったメガネの初老男性が扉を開けた。
「こんばんは、神父様。夜分に申し訳ございません」
神父に笑顔で挨拶するカイン。
「おや? あなたは……殿下の護衛騎士のカイン様ではありませんか! 一体どうなさったのです?」
「はい。実はこちらにいらっしゃる方々は僕の知り合いで、巡礼の旅を続けている方々です。町の人たちに親睦を兼ねて御挨拶させていただきたいので、明日こちらの教会の前で場所をお借りすることが出来ないでしょうか?」
スラスラと言葉を紡ぐカイン。
「カイン様のお知り合いの方々ですか? しかも巡礼の旅を続けているとは……何とご立派なのでしょう。ええ、ええ。私は一向に構いませんよ」
「そうですか。それはどうもありがとございます。それでは、僅かばかりではありますが献金させて下さい」
え? 献金!?
その言葉に驚いて、カインを見る。けれど彼は私の視線を気にすることもなく、懐から小さな布袋を手渡した。
「これはこれは……いつもご丁寧にありがとうございます。では、ありがたく頂戴いたします」
恭しく受け取る神父。
ええっ!? 受け取っちゃうの!?
「はい。それでは明日の朝、また伺います」
カインが一礼したので、私達も彼に習って頭を下げた。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。それでは明日またお会いいたしましょう」
そして、私達は神父に見送られながら教会を後にした。
****
帰りの荷馬車の中、今はジャンが御者台に座っている。
「あの……カイン」
「何でしょう? リアンナ様」
「献金て……いくら支払ったの?」
「いいんですよ、そのようなことはお気になさらないで下さい」
「だけど、やっぱり気になるわ。ね、ニーナもそう思うでしょう?」
隣に座るニーナに同意を求めると、彼女はきっぱり頷く。
「はい、私も気になるところですね」
「分かりました……5万ロンです」
「ええっ!? 5万ロン!?」
「そんなに支払ったのですか!?」
カインの言葉に、私とニーナが同時に驚く。するとカインが不思議そうに首を傾げる。
「それほど驚く金額でしょうか?」
「それは驚きますよ。たった1回の巡業で、しかも外を借りるだけなのに5万ロンですか?」
「ですが、今までの寄付金に比べれば大幅に少ない額ですが……」
「寄付金?」
私は首を傾げた。
「ええ、そうです。領地の教会は全て人々からの献金で運営されていますからね。勿論王族が一番高額を寄付しておりますから」
「そうだったの? だけど、カインに寄付金を払わせるのは何だか悪いわ。私も払うわよ」
下げていたショルダーバッグから財布を取り出そうとした時。
「お待ち下さい、リアンナ様」
不意に手首を掴まれた。
「これでも、僕は伯爵家の者です。リアンナ様はこれから旅を続けられるのですから、これくらいは僕に出させて下さい」
「カイン……」
カインは真剣な眼差しで私を見つめ……彼の大きな手は、とても熱かった。
「あ! す、すみせん! 勝手にリアンナ様に触れてしまいました!」
慌てて手を離すカインに、ジャンが振り向いた。
「何ですって!? リアンナ様に触れたですって!?」
「落ち着きなさいよ、ジャン。手首を握りしめただけだから」
ニーナがジャンを宥める。
私は2人の騒ぎを聞きながら、視線をそらしているカインの様子をそっと伺った。
月明かりに照らされたカインの横顔は……何だか少しだけ赤く染まっているように見えた――
教会を見つめながら思ったままの気持ちを言葉にすると、何故かカインがじっと私をみつめている。
「何? カイン」
「あ、申し訳ございません。リアンナ様がそのような言葉を口にするなんて、少し意外だなと思って」
「意外って、どいうことですか?」
そこへ、ジャンが会話に入ってきた。
「リアンナ様は綺羅びやかな光景が好みだと思っていたんだ。例えば、美しい城の庭園とか……。だから、このような景色を好まれているとは以外だと感じただけですから」
最後の言葉は、私をじっと見つめながら答えるカイン。
「そうですか」
何処かぶっきらぼうに答えるジャン。そして黙ってジャンを見つめているニーナ。
う〜ん……やっぱりジャンはまだカインのことを何処か敵視しているのかもしれない。
やっぱり、御者の仕事を取られてしまった為だろうか?
そこで私はジャンの肩を軽く叩いた。
「ジャン、帰りの道はあなたが御者台に乗って宿屋まで連れて行ってくれる?」
「はい、勿論です! 任せて下さい、リアンナ様!」
私の言葉で元気が出たのか、ジャンが嬉しそうに頷く。
「リアンナ様。場所も確認したことですし、もう宿屋に戻りましょうか?」
ニーナの言葉に、カインは首を振った。
「いえ、教会を訪ねましょう。そして、明日ここで巡業させてもらうように頼むのです。そうすれば、朝からでも始められますよね?」
「だけど、こんな夜分に教会を訪ねるのは失礼じゃないかしら?」
「俺もそう思いますね」
私の言葉に頷くジャン。
「それなら大丈夫です。教会は常に開いています。何故なら一日中困った人たちを受け入れて上げる場所なのですから」
「なるほど……支援施設のような役割も果たしているわけですね」
その話で納得できた。
「それに僕は教会に顔が利きます。殿下のお供で領地の教会は全て訪ねていますから。だからお任せ下さい」
「それは頼もしいですね。なら早速訪ねてみましょう」
ニーナがカインを促し、その様子を腕組みして見つめるジャン。
う〜ん。ニーナとの仲はうまくいきそうだけど、ジャンはまだ時間が掛かりそうだ。出来れば、仲良くなって欲しいのだけどな……。
「では皆さん、行きましょう」
そして私達はカインを先頭に教会へ向かった。
教会の扉の前には呼鈴の紐がぶら下がっていた。
カインは2回紐を引き、少しの間私達はその場で待機していた。
「……おい、やっぱり誰も出てこない。やっぱり寝てるんじゃないのか?」
「しっ!」
ジャンがニーナの耳もとに小声で囁き、ニーナがそれを咎める。
その時。
「どうもお待たせいたしました」
白いローブを羽織ったメガネの初老男性が扉を開けた。
「こんばんは、神父様。夜分に申し訳ございません」
神父に笑顔で挨拶するカイン。
「おや? あなたは……殿下の護衛騎士のカイン様ではありませんか! 一体どうなさったのです?」
「はい。実はこちらにいらっしゃる方々は僕の知り合いで、巡礼の旅を続けている方々です。町の人たちに親睦を兼ねて御挨拶させていただきたいので、明日こちらの教会の前で場所をお借りすることが出来ないでしょうか?」
スラスラと言葉を紡ぐカイン。
「カイン様のお知り合いの方々ですか? しかも巡礼の旅を続けているとは……何とご立派なのでしょう。ええ、ええ。私は一向に構いませんよ」
「そうですか。それはどうもありがとございます。それでは、僅かばかりではありますが献金させて下さい」
え? 献金!?
その言葉に驚いて、カインを見る。けれど彼は私の視線を気にすることもなく、懐から小さな布袋を手渡した。
「これはこれは……いつもご丁寧にありがとうございます。では、ありがたく頂戴いたします」
恭しく受け取る神父。
ええっ!? 受け取っちゃうの!?
「はい。それでは明日の朝、また伺います」
カインが一礼したので、私達も彼に習って頭を下げた。
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。それでは明日またお会いいたしましょう」
そして、私達は神父に見送られながら教会を後にした。
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帰りの荷馬車の中、今はジャンが御者台に座っている。
「あの……カイン」
「何でしょう? リアンナ様」
「献金て……いくら支払ったの?」
「いいんですよ、そのようなことはお気になさらないで下さい」
「だけど、やっぱり気になるわ。ね、ニーナもそう思うでしょう?」
隣に座るニーナに同意を求めると、彼女はきっぱり頷く。
「はい、私も気になるところですね」
「分かりました……5万ロンです」
「ええっ!? 5万ロン!?」
「そんなに支払ったのですか!?」
カインの言葉に、私とニーナが同時に驚く。するとカインが不思議そうに首を傾げる。
「それほど驚く金額でしょうか?」
「それは驚きますよ。たった1回の巡業で、しかも外を借りるだけなのに5万ロンですか?」
「ですが、今までの寄付金に比べれば大幅に少ない額ですが……」
「寄付金?」
私は首を傾げた。
「ええ、そうです。領地の教会は全て人々からの献金で運営されていますからね。勿論王族が一番高額を寄付しておりますから」
「そうだったの? だけど、カインに寄付金を払わせるのは何だか悪いわ。私も払うわよ」
下げていたショルダーバッグから財布を取り出そうとした時。
「お待ち下さい、リアンナ様」
不意に手首を掴まれた。
「これでも、僕は伯爵家の者です。リアンナ様はこれから旅を続けられるのですから、これくらいは僕に出させて下さい」
「カイン……」
カインは真剣な眼差しで私を見つめ……彼の大きな手は、とても熱かった。
「あ! す、すみせん! 勝手にリアンナ様に触れてしまいました!」
慌てて手を離すカインに、ジャンが振り向いた。
「何ですって!? リアンナ様に触れたですって!?」
「落ち着きなさいよ、ジャン。手首を握りしめただけだから」
ニーナがジャンを宥める。
私は2人の騒ぎを聞きながら、視線をそらしているカインの様子をそっと伺った。
月明かりに照らされたカインの横顔は……何だか少しだけ赤く染まっているように見えた――