無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
4章 1 レオポルト・クラッセン
カインが俺の元を旅立ち、早くも10日以上が経過していた。
「くそっ! カインの奴め……一体、どういうつもりだ? あの女の後を追っているくせに何故あれから1度も連絡を寄越さないのだ?」
カインの連絡は「イナク」の村から完全に途絶えている。
書斎に置かれたソファに乱暴に座り、イライラしながら爪を噛んでいると不意に柔らかい手で包まれた。
「おやめ下さい、殿下。指が傷ついてしまいますわ」
「アンジェリカ……」
俺の愛する女性で、将来后になる彼女が見つめていた。
「伝書鳩で連絡を取り合うには、既に距離が離れすぎてしまったからかもしれませんわ。だから連絡が取れないのではありませんか?」
「いや、それは無いと思う。オスカーは千キロ先までだって飛んでいける鳥だぞ?」
「それではもしや、他の鳥に襲われてしまったのでしょうか?」
「……その可能性はあるかもしれないが、もしくはあの女に懐柔されて俺に連絡を入れるのを怠っている可能性もありえる。何しろカインはお人好しなところがあるからな」
「そんなまさか……私にはカイン様が懐柔されたとは思いませんけど? 何しろ相手はあのリアンナ様ですよ?」
フフフとアンジェリカは笑う。
「そうだな。アンジェリカの言う通りだ。悪名高いマルケロフ家の腹黒い女がカインを懐柔出来るはずなどないだろう。パーティ会場ではおかしな様子だったが、どうせ演技に決まっている」
「ええ、そうですよ。きっと伝書鳩に何かあったに違いありません。だからカイン様も連絡が取れずにいるのですよ。けれど、他に連絡手段は無いのでしょうか?」
アンジェリカが首を傾げる。
「こうなったら他の者たちにカインの後を追わせるしか無いな。『イナク』に立ち寄っていると言う事は、次の行先は『ユズ』だ。まずはあの付近で情報を集めさせることにしよう」
「さすがは、殿下ですね。素晴らしい考えだと思います」
俺の考えにアンジェリカが微笑んだ。
「当然だ、次の次期王になるのだからな。とりあえず、あの女がこのまま何もせずに国を出て行けばそれでいいだけのことだ。その後は入国禁止令を公布する。二度と戻って来れないように追放してやるのだ」
「まぁ、追放なんて…‥‥それはあまりにもやり過ぎではありませんか?」
やはり、アンジェリカは心優しい女性だ。だが……。
「アンジェリカ、忘れたのか? 王太子妃選抜試験では、何度もあの女に妨害されてきただろう? 時には命を脅かされるような目にだって遭わされてきたじゃないか。階段から突き落とされたと聞いた時は心臓が止まるかと思ったほどだ」
アンジェリカの肩を抱き寄せた。
「御心配頂き、ありがとうございます。でも、もうその事なら大丈夫です。大した高さから落とされた訳でもありません。少し足を痛めただけで済んだのですから」
「アンジェリカ……」
そっと彼女の頬を撫でる。
アンジェリカが階段から突き落とされた場面を目撃した者は誰もいない。大きな音が聞こえて駆け寄ってみれば、階段下に倒れているアンジェリカと、上から見下ろすリアンナの姿があっただけなのだ。
その為、リアンナは罪に問われることは無かった。
何しろ本人が、「私は何もしていない」と罪を認めなかったからだ。
「大丈夫だ、あの女は確実に追い払う。もう二度とお前に危害を加えさせることは無いから安心してくれ」
アンジェリカの手を握りしめた。
「はい、殿下」
――その後
俺はカインの後を追うように騎士達に命じた。
そして彼らからある噂を聞くようになる。
「聖女様が現れた」という噂話を――
「くそっ! カインの奴め……一体、どういうつもりだ? あの女の後を追っているくせに何故あれから1度も連絡を寄越さないのだ?」
カインの連絡は「イナク」の村から完全に途絶えている。
書斎に置かれたソファに乱暴に座り、イライラしながら爪を噛んでいると不意に柔らかい手で包まれた。
「おやめ下さい、殿下。指が傷ついてしまいますわ」
「アンジェリカ……」
俺の愛する女性で、将来后になる彼女が見つめていた。
「伝書鳩で連絡を取り合うには、既に距離が離れすぎてしまったからかもしれませんわ。だから連絡が取れないのではありませんか?」
「いや、それは無いと思う。オスカーは千キロ先までだって飛んでいける鳥だぞ?」
「それではもしや、他の鳥に襲われてしまったのでしょうか?」
「……その可能性はあるかもしれないが、もしくはあの女に懐柔されて俺に連絡を入れるのを怠っている可能性もありえる。何しろカインはお人好しなところがあるからな」
「そんなまさか……私にはカイン様が懐柔されたとは思いませんけど? 何しろ相手はあのリアンナ様ですよ?」
フフフとアンジェリカは笑う。
「そうだな。アンジェリカの言う通りだ。悪名高いマルケロフ家の腹黒い女がカインを懐柔出来るはずなどないだろう。パーティ会場ではおかしな様子だったが、どうせ演技に決まっている」
「ええ、そうですよ。きっと伝書鳩に何かあったに違いありません。だからカイン様も連絡が取れずにいるのですよ。けれど、他に連絡手段は無いのでしょうか?」
アンジェリカが首を傾げる。
「こうなったら他の者たちにカインの後を追わせるしか無いな。『イナク』に立ち寄っていると言う事は、次の行先は『ユズ』だ。まずはあの付近で情報を集めさせることにしよう」
「さすがは、殿下ですね。素晴らしい考えだと思います」
俺の考えにアンジェリカが微笑んだ。
「当然だ、次の次期王になるのだからな。とりあえず、あの女がこのまま何もせずに国を出て行けばそれでいいだけのことだ。その後は入国禁止令を公布する。二度と戻って来れないように追放してやるのだ」
「まぁ、追放なんて…‥‥それはあまりにもやり過ぎではありませんか?」
やはり、アンジェリカは心優しい女性だ。だが……。
「アンジェリカ、忘れたのか? 王太子妃選抜試験では、何度もあの女に妨害されてきただろう? 時には命を脅かされるような目にだって遭わされてきたじゃないか。階段から突き落とされたと聞いた時は心臓が止まるかと思ったほどだ」
アンジェリカの肩を抱き寄せた。
「御心配頂き、ありがとうございます。でも、もうその事なら大丈夫です。大した高さから落とされた訳でもありません。少し足を痛めただけで済んだのですから」
「アンジェリカ……」
そっと彼女の頬を撫でる。
アンジェリカが階段から突き落とされた場面を目撃した者は誰もいない。大きな音が聞こえて駆け寄ってみれば、階段下に倒れているアンジェリカと、上から見下ろすリアンナの姿があっただけなのだ。
その為、リアンナは罪に問われることは無かった。
何しろ本人が、「私は何もしていない」と罪を認めなかったからだ。
「大丈夫だ、あの女は確実に追い払う。もう二度とお前に危害を加えさせることは無いから安心してくれ」
アンジェリカの手を握りしめた。
「はい、殿下」
――その後
俺はカインの後を追うように騎士達に命じた。
そして彼らからある噂を聞くようになる。
「聖女様が現れた」という噂話を――