ミステリH
14 友
2024/12/20
あの10月末のハミルENの面々との話合いからぎこちなくなった
世間はクリスマスムードで盛り上がっているのに、俺の心は白けたままにホワイトクリスマスで消沈していた
千七菜ともう一度やり直すためにクリスマスプレゼントでも用意しようと思ったが、ジュエリーショップの前で右往左往していまい足が踏み出せなかった
あの時の話合いで彼女は俺の味方をしなかった
その現実が俺の心を傷つけた
千七菜の波風立たせずの微笑は俺ではなく、ハミルENという集合体を選択したという決定を俺に痛感させた
俺の熱情を鼻で一笑されたような気さえしてしまって、連絡することさえ怖くなりそのまま日常をやり過ごした
用意しても渡せないかもしれないプレゼントを用意することに躊躇いながら、主体性なく店員の微笑みと歩み寄りが俺の逃げ道を用意した
嫌がる背中をクリスマスが無理矢理に押してくるような気がして滅入った
幸せの押売りみたいなクリスマスに少しばかり乗ってやって、財布を開きケーキやらチキンやらを買って押売りを一噛みしてやり過ごすのが妥当だと決定した
家で嘘みたいな体育座りをしてたら居ても立っても居られなくなって外に出た
PM7:40
いつもの名城公園駅に向かって名城線、平屋大通駅で降りて繁華街に向かった
酒を煽ろうと思い歩くと人混みの中で肩がぶつかる
気が立っていたし言葉には発さなかったが、男を睨みつけた
男も睨み返し口論になった
手を出しちまった
相手の男も俺を殴り返し揉み合った
数人の漢たちが俺たちを剥がして押さえつけた
涙が出そうだった
警官が駆け寄ってきて交番に連れて行かれた
暴行罪と傷害罪の説明を聞かされた後、和解を促された
互いに和解に応じて留置などは免れ帰宅を促された
俺に朧げを与えてくれたのは酒ではなくて拳だった
栄駅に向かって地下への階段を降りるところで、俺と同じ種の目をした一刻前の相手の男に再び出会った
目が合ったところで向こうから謝罪を入れてきた
俺から手を出したのに"申し訳なかった"
相手の男は"売られた喧嘩は買わなければいけない"
不思議な感覚だった
同じ匂いがするという動物的感が働いて連絡先の交換を申し出た
男は心良く応じてくれた
メッセージアプリの類ではなく、電話番号のみを交換した
男はトシミという名だった
トシミは南の金山駅に帰って、俺は北の名城公園駅に帰る
別れを告げた
喧嘩した男と連絡先を交換するなんて十代の不良漫画を思い出したら少し笑えた
名城線の車内で、地下鉄で、
クリスマスの華やかさから逃れられる深さが心を安めた
俺たちの居場所はまだまだ地下だから、
程よく椅子に座れたし
目を瞑り列車が揺れている
目を閉じても感じる冷たさが朧げを覚ました
コンクリートのカーテンの漆黒が俺を包んでいた
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