White Milk
教室の中には生徒たちがいるから、いつものように話しかけることはできない。
だから顔を美亜の高さに合わせて口を動かした。
(大丈夫だ。)
なんせ俺が担任なんだから。
何かあったって俺がフォローすることができる。
それにこのクラスの奴らは煩いけど、良い奴ばかりだからうまくいくだろう。
俺の口の動きを理解したらしい。
美亜は不安そうに、それでも小さく頷いた。
「よし……じゃあ黒板の前に。」
美亜が教室に入ると一瞬の静寂が訪れた。
(―――可愛い。)
きっと生徒たちは皆そう思っているだろう。
そしていっき騒ぎ始めた。
色白の肌、肩の下まで伸びた綺麗な艶のある黒髪、大きなパッチリとした二重、折れそうな程に細い体、ぷっくりと形の良い唇。
美亜は美人だ。
初めて見たときは、俺も息を呑んだ。
今までは女に対して、綺麗だとか可愛いだとか思ったことがなかった。
でも美亜だけは……。
不安そうに俺を見る美亜の視線で我にかえった。
「静かに。……えーと、転校生の浅井美亜(アサイ ミア)さんです。」
俺が肩をポンと叩くと、美亜は思い出したように急いでおじぎをした。