モイラ --天使が犯した罪と罰--
「…わた、しは」
クロイは私の幻覚により、ぐにゃりとその姿を変えていく。
愚かにもそれは私が望んだもので、永遠の輝きを放つ銀髪と、琥珀色の瞳が目に焼き付けられる。
アイテルだ。
“夜明け”の意味を持つアイテルが、“夕暮れ”の意味を持つクロイを支配していく。
「……ゆる…された、い…」
誰に?
何を?
「ゆるして、ほしい………」
それはまるですがり付くようだった。
傘を差しているはずなのに、私の頬はずぶ濡れになっていくのが嫌でも分かった。
温かい雨だ。
人肌と等しいその雨は、私を悲しみへと包んでいく。
私のその姿を、アイテルである何かがじっと見つめている。
「……たすけ、て」
──私があの時、アイテルの首を絞めたのは。
刹那の出来事ではなかったのだ。