モイラ --天使が犯した罪と罰--
記憶の光
『ユマ、お願いだ………。
この手で、俺を殺してくれ………』
アイテル……貴方は最期にそう言っていたね。
最期に聞いた貴方の声はとてもか細くて、
命の灯火が消えてしまう──そんな予感がした。
私と貴方の周りには炎が囲み、黒煙が上がっている。
(助からない)と歯を食い縛ってもただ無駄なだけで、
私と貴方との間では静寂が流れている。
『…そんなこと出来ない、アイテル、貴方は生きるのよ!』
私は、貴方の言葉を聞いてすぐに首を絞めた訳ではない。
私には確かな迷いが生じていたし、それが口に出ていた。
私は貴方を殺したくはなかったし、生きていてほしかった。
貴方が見ることが出来なかった世界を、私が代わりに見せてあげたかったのだ。
星を見て、海を見て、陸を見て、それで“ああ、今日も1日が終わったな”って。
“今日は、何事も無くて良かった”って。
そう思わせてあげたかった。