モイラ --天使が犯した罪と罰--
「ユマさん、今から俺とカフェでも行こうか」
クロイは唐突にそんなことを言うと、私の手を引き、断りもなく歩きだしていく。
私は足のもつれを感じつつも、クロイの後を追う。
クロイは今、どんな表情をしているのだろうか。
こんなずぶ濡れになって、急に泣き出した私を、今どう思っているのだろうか。
「ココアにしたよ、とりあえずタオルで拭いて」
クロイに連れられたのは、路地裏にある少し古びた喫茶店であった。
クロイは鞄からタオルを取り出して、私に渡す。
渡されたタオルは新品のようにふわふわとしていて、私は申し訳なさから少し顔を拭いて膝元に掛けた。
しばらくすると、クロイが代わりに注文したココアが目の前に届く。
ティーカップから伝わる温もりは、私を癒してくれるようで、思わずそれを口にしていた。
「甘いの、好きでしょ?」
「はい…」
「俺も好き。顔が喜んでる」
クロイが注文したのは、生クリームがたっぷり乗ったキャラメルマキアート。
もしかしたらクロイは、私以上に甘党なのかもしれない。