モイラ --天使が犯した罪と罰--
「単刀直入に言うけど、君を悲しませてるのはアリアなの?」
クロイの声は少し低くなり、真剣な眼差しへと変わる。
私は首を振り必死に否定した。
むしろ私はアリアに対して、日々感謝をし続けるばかりの毎日なのだ。
「アリアさんは悪くありませんっ…!
私が、私が弱いのがいけないんです……」
ぎゅうっとスプーンの柄を握りしめると、それをクロイは手でそっと制止した。
先程まで外にいたのに、クロイの手は信じられないくらい温かくて、私は徐々に握りしめる手の力をゆるめていく。
「アリアじゃないことは分かったよ。
でもアリアは今ユマさんがこうして泣いてるのを知ってるのかな」
諭すような言葉で私は落ち着きを取り戻し、そのままクロイの手の温もりを感じていた。
それはまるで、時間が止まっているかのようだった。
「…今日のことは、アリアさんには話さないでください。
私の問題なので」
「分かった。君と俺の秘密にしておくよ」
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、クロイはにやっと不敵な笑みを浮かべ、私から手を離した。
その手は口元へ宛がわれ、私は嫌な予感を感じ取ったのだ。