モイラ --天使が犯した罪と罰--
ホワイト・ルーム
「ユマさん、
俺の研究に協力して欲しいんだ」
指差した左胸は大きく拍動し、私とクロイの間で今まさに、新たな関係が構築されようとしていた。
「研究……ですか?」
「そう、心臓の研究。
おもしろそうだと思わない?」
そうクロイに勧められるが、私は気が乗らない。
クロイに対する一種の偏見なのだろうか、私はマッドサイエンスちっくな実験を彷彿とさせてしまい、不安が募った。
「あれ、意外にもお気に召さない?」
「危険かなって思って……」
「ん~、採血とか心エコーとか一通りのことをやってもらうだけだよ」
意地の悪いクロイのことだ。
きっと後出しで何かを企んでいるに違いない。
しかし同時に私はアリアから言われたことを思い出す。
それはアリアと出会って、初日に言われたことであった。
──『ユマ、アナタは“レシピエント”なの』
もしかしたらクロイの研究に参加することで、私は自分の生前のことを思い出せるのかもしれない。