モイラ --天使が犯した罪と罰--
「【ユマ・オーウェン】、ですか…?」
「そうだよ。
俺はこれから先、特殊な病気を持った子を沢山救いたいんだ」
【ユマ・オーウェン】。
クロイが以前、私に話してくれた人だ。
心臓病を持ち手術をしたが、転院先で亡くなってしまった女の子。
私と瓜二つの顔を持つ女の子。
「継続的に心臓の研究が出来る人を、俺はずっと探しているんだ。
それが君なら、すごく嬉しい」
私はきっと、彼が求める人ではない。
彼の気持ちに応えることもできないだろう。
それなのに私の脳はクロイに従うよう司令が出されているようで、私は自分のことがよく分からなくなる。
どうして私は、こんなにもクロイのことが気になってしまうのだろうか。
「……少しの間なら」
「うん」
「少しの間なら、大丈夫です」
そう、少しの間彼に心臓を委ねればいい。
そしてそのまま季節が過ぎるのを待てばいいのだ。
そうすればこの複雑な気持ちも、クロイに感じる運命も、全て無くなるのだから。