モイラ --天使が犯した罪と罰--
「なぁーんですってぇ…!!」
クロイと別れた後、今日のことをアリアに伝えると、それまで食べていたボロネーゼのフォークを落としてそう叫んだ。
「ユマ、ぜーったいクロイの誘いに乗っちゃ駄目よ!
アイツは研究なんて言いながらヤバイことしてくるわよ!」
案の定の反応だった。
アリアとクロイは犬猿の仲であるし、得たいの知れない心臓の実験に参加する、なんて言われたら驚かれるのは無理もないだろう。
「少しの間だけならと約束したので、大丈夫だと思うんですけど…」
「あら、約束しちゃったの!?
アタシの大事なユマになんてことを……」
オロオロしているアリアの手をそっと撫でて、私は彼を落ち着かせる。
繰り返し“大丈夫”と告げると、アリアは決心したようにフォークを握りしめながら椅子から立ち上がった。
「こうなったら、アタシもついていくわ!!
ユマ、許してちょうだい!」
「!?」
アリアが研究についていくことは予想外で、私も思わずフォークを皿の上に落としてしまった。
アリアの目は熱く燃えており、拒否することもできず、私はそのまま研究の日を迎えることとなったのだ。