モイラ --天使が犯した罪と罰--
「ねぇ、もしかして……【ユマ・オーウェン】さん?」
そう看護師さんに声を掛けられると、私は首を横に振った。
彼女はここに入院していた、とあらば他に知っている人がいるというのは当然なのだろう。
「そう……」と少し残念そうな表情を見ると胸が痛んだが、私は意を決して看護師さんに話しかける。
「あのっ!私って…【ユマ・オーウェン】さんに似てるんですか?」
まさか話しかけられるとは思わなかったのか、看護師さんは目を丸くしていたが、すぐに柔らかな笑顔で返してくれた。
「ええ、とってもそっくりよ。
この辺りでサファイアの瞳を持つ人は珍しいもの」
ニュクスには珍しいミルク色の髪に、サファイアの瞳。
そして瓜二つの容姿。
勘違いされるのは無理もないのだろう。
「ここにいるトワイライト先生からも、似てるって言われたんです。
だから彼女のことが気になっていて…」
「トワイライト先生にも会ったのね。
先生、きっととても驚いたでしょうね」
──……だって、先生の恋人だった人だもの。
「え……」
看護師さんからそう言われると、私の足は鉛のように重くなり、その場に硬直してしまう。
いつの間にか冷汗をかいており、私は状況を上手く飲み込むことが出来なかった。