モイラ --天使が犯した罪と罰--
驚いているのは、隣のアリアもだった。
まさかクロイに恋人がいたなんて、とでも言いたげな表情だった。
「トワイライト先生ったら、その子にぞっこんだったんですよ。
いつもその子のお話ばかりしてて…。
でも転院してからどうなったのかしら…?」
「……………っ」
これ以上は何も言えず、私たちは逃げるようにエレベーターから降りた。
アリアと私は目を合わせると、お互いが妙に納得したような顔をしていた。
「アイツ、結構単純なヤツだったのね。
研究と言いながら、ユマを独占したかったのね…」
きっとクロイは、私と【ユマ・オーウェン】を重ねて見ているに違いない。
だからどこか懐かしむような、辛そうな眼をしていたのだと思う。
「……私はその子じゃないのに」
もしかしたら私は、とんでもない人と巡り会ってしまったのかもしれない。
クロイにとっても、私は運命の糸となりうるような存在なのかもしれない。
それは勿論、私も同じだった。
私はクロイによって心臓を暴かれる。
そしてそこから運命の糸が紡がれる。