モイラ --天使が犯した罪と罰--
(……重症化を繰り返せば)
いや、一度でも重症化してしまえば
目の前に座っている女の子の、命は散ってしまうだろう。
(要は、心臓移植目的で転院してきた訳か)
彼女の前髪は長く伸びていて、あまり表情は読めない。
しかし静かに己の運命を受け入れているようにも見える。
「オーウェンさん、だったね。
まず今の症状を聞いていいかな」
「動いた時に息切れが酷いくらいです。
動悸もありますけど、たまにくらいの頻度です」
「動いた時というのは具体的にどういったことかな」
「階段を登り下りした時とか、少し走ってみたりとかした時ですかね」
彼女から聞いた言葉を、細かくカルテに記載していく。
症状の一つ一つをアセスメントしていき、方針を導きだしていく。
【主治医:クロイ・トワイライト】。
そうカルテに表示されるのを見て、妙に気持ちが引き締まった。
「……そしたら来週再診にして、そこで心エコーをしよう。
今日は処方を新しく出しているから、何かあったら連絡してください」
「分かりました。先生、これからもよろしくお願いします」