モイラ --天使が犯した罪と罰--
今まで危険な状態な患者や、治療の末亡くなってしまった患者は多く見てきた筈だった。
けれどユマを失うことは、愛が失われることは、余りにも俺には耐え難いことで、どんどん涙が溢れた。
『クロイ先生』
彼女が俺をそう呼ぶ度に、俺は君を必要として苦しくなる。
でもそれと同時に俺は幸せな気持ちになっていく。
君は俺にそんな気持ちをもたらしてくれる、天使のような人だった。
「ユマ、1つ聞いてもいいかな」
「なに?私、クロイ先生の為なら何でも答えるよ」
にこりと微笑む彼女に俺は今から、残酷なことを言うことになる。
きっと悪い話だろうと彼女も予想しているのか、目線は俺ではなく窓から見える夜空に向けられていた。
「君の心臓は今、危ない状態だ。
これ以上積極的な治療をするとなると、転院が必要になると思う」
「……うん、そうだね。
先生と離ればなれになっちゃうね」
「…今から言うのは、もしもの話だよ」