モイラ --天使が犯した罪と罰--
もし、
もしも……
君の心臓と呼吸が止まってしまったとき、
蘇生をするための処置を行うか?
それとも自然に任せて、死を迎えるか?
「……………」
彼女は暫く押し黙って、頭を垂れる。
いずれは必ず聞かなければならないことだった。
けれどもその日を迎えてしまった以上、俺はユマの意見を尊重し、動かなければならない。
お互いに重くのし掛かる状況で、ユマは口をゆっくり開いた。
彼女もまた、自身の過去を1つずつ紡いでいった。
「私ね、お母さんから嫌われているの」
「うん……」
「だからずっと、死にたかった。
心臓の病気になったことも、ラッキーだって思ってたの」
ユマと付き合っていく中で、彼女の家庭環境が悪いことは薄々気付いていた。
受診の時は母親が付き添うこともあり、その際淀んだ瞳をする彼女を、哀れだと思ったことも多々あった。
だから彼女が家から離れたい時は側にいたし、なるべく寂しい思いをさせないようにデートも工夫した。
けれど君はやっぱり──取り返しの付かない思いを抱いていたんだね。