モイラ --天使が犯した罪と罰--
「でも私……生きたい」
そう呟いた彼女の瞳には、窓から覗く夜空がうつしだされている。
流星群だろうか、星は一瞬キラリとした弧を描いて消えていった。
それはユマの願いを、望みを聞き入れているかのようだった。
「…生きて、クロイ先生と色んな景色を見たいの」
水族館、遊園地、ショッピングモール。
思い当たるところは全て行きたい、という彼女。
海のような広い世界で、俺と一緒にいたいという彼女。
そんな彼女を、俺は好きになってよかったと思った。
「だから、ね……私を生かして、先生」
まるでスローモーションのように、お互いの唇がゆっくりと重なる。
お互いの時間は、今だけ止まっていた。
このまま永遠に時が進まなければいい、そう思ってしまったほどだった。
「移植が成功したら、旅行に行こう」
「どこに連れていってくれるの?」
「ニュクスから少し離れた所に、芸術で有名な所があるんだ。
そこで開かれる祭に案内するよ」
「わぁ……とっても楽しそう」