モイラ --天使が犯した罪と罰--
「俺は何も力は無いんだ、妹と違ってね。
それなのに……ここで俺は神として崇められて、
挙げ句組織の繁栄を促している」
──だから、俺を罰する必要があるんだろう?
貴方の心に触れずとも、そう訴えていることだけは分かる。
瞳の奥の苦悩と、嘆きが伝わりごくりと唾を飲み込む。
天使には感覚などありはしないのに、胸の辺りがチクリと痛む感覚がするのは、貴方に同情しているからなのだろうか。
「【ヘメラ】は沢山罪を犯したわ。
簡単に人を殺すことなど、許されるはずはないの」
「そうだね、天使様」
「でも、貴方の瞳を見ていると…おかしな気持ちになる」
生まれたときから奇妙な運命に繋がれている貴方を、私が断ち切ってしまうことは、正解なのか。
けれど貴方に罪があるかといえば、違わないとも思ってしまう。
今、私はこの人の運命を握っている。
きっと、そうだ。