モイラ --天使が犯した罪と罰--
色々な話を聞いた。
拒絶反応のリスク。
血栓症のリスク。
輸血。
全身麻酔。
挿管。
術後はICUで管理します、と締められたインフォームド・コンセントに対し、隣に座っていたユマの母親は神妙な顔付きをしていた。
ユマの母親は、確かに遺伝子を引いているからか、秀でた容姿をしていたのは明らかだった。
しかしユマの母親の髪色と瞳はまるで真っ赤なルビーのように赤く、似て非なるものでだった。
ユマの母親は心臓移植の説明書と同意書にサインをする。
俺も同席したため書類にサインを行い、これで心臓移植の準備は整った。
「ユマさんとお付き合いしています。
クロイ・トワイライトです。
この度は同席する許可を頂きありがとうございます」
ユマの母親にきちんとした挨拶をした方が良いだろうと思い、深々と頭を下げる。
しかしユマの母親は俺の挨拶を無視して、小さく溜め息を吐いた。