モイラ --天使が犯した罪と罰--
「生まれちゃいけない子だからよ」
即答だった。
暴力にうって出なかった俺を、褒め称えくらい理性が少し働いた。
「あの子を産んだとき私は後悔した、
けれど……体裁があるから捨てれなかった」
ぎゅうっと俺は拳を握りしめる。
駄目だ、もう少し理性が働け。
そうすれば大事にはならずに済む。
それなのに、俺は愛する人を傷つける想像主を痛みつけたくて堪らなかった。
ユマは、ひたすら冷たい家族に耐えてきたというのに、こんな仕打ちはあんまりじゃないかと思った。
「ユマは、一度だって貴方を憎むことは言わなかった。
俺は何があっても、ユマを信じます」
宣言するようにそう告げた俺の目を、虚ろな瞳が射貫く。
真っ赤に燃え盛るルビーの瞳の奥は、暗く淀んだものが宿っており、ユマに対しての執着を確と感じた。
「ユマの出生を聞いたら、後悔するわよ」
そう言い残して、ユマの母親は相談室から去っていった。
去り際の悲しげな後ろ姿は、妙にユマと重なる。
ああ、ユマは──母親似なんだ。