モイラ --天使が犯した罪と罰--
画像検査を終えたユマが戻ってくると、クロイの瞳は一瞬の煌めきを見せる。
その瞳を見たアリアの心は、少しだけ薔薇のトゲが刺さったかのように、チクリと傷んだ。
(……よくないわよね、きっと)
アリアは心の中で思う。
決して口には出せない。
きっとクロイは、このままユマを思い続けると──地獄を見るだろうなんて。
「レントゲン所見も、エコーの時と相違ないね。
造影CTはリスキーだから、また考えるよ」
「やっぱり、私の心臓は移植されたものなんですか?」
「99%、俺は移植したものと思ってる。
残りの1%は、別の心臓の手術を受けたかどうか。
どちらにしろ心臓の病気を持っていたと思うよ」
何か症状が出れば、俺が診る。
そうユマに告げたクロイを、アリアは思わず牽制していた。
「……症状が出た時はアタシが診るわ。
近くにいるし、早期治療もできるでしょ?」
「まあ、それでもいいけど…」
“君は何を考えているの?”、なんて言わんばかりなクロイに怯みそうになるが、アリアは意を決してこう告げた。
「高度な心臓の治療をしてるって分かったんなら、今日からアンタとアタシは同じ研究チームよ。
アンタよりアタシの方が“心臓移植”の分野には強いんだから」