モイラ --天使が犯した罪と罰--
「分かったよ。
その代わり、すぐに連絡してね」
「当たり前よ」
アリアは頭の中で思い巡らせる。
このままクロイとユマを引き剥がすか、それとも──…。
ぐっと堪え、そっとユマの手を引く。
ユマはその手を弱い力で握り返してくれる。
死者が蘇るだなんて、医学上はあり得ない。
けれどユマは出会った時から、触れてはいけないような事情を持ち合わせていて、過ごしていくうちにお互いは家族のような存在となってしまった。
まだユマは自身の記憶を取り戻してはいないが、一つ一つパズルのピースを嵌めていくかのように、明らかとなっていく。
そこで気になるのは、【ユマ・オーウェン】という人間だ。
【ユマ・オーウェン】と彼女は、あまりにも境遇が似通い過ぎている。
おかしいくらいに。
クロイと離れ、アリアはユマの背に向かってこっそりと問う。
「ねぇ……アナタは」
─── 一体、誰なの?
本当はそう言いたかった。
それなのに口から零れた言葉は……。
「アナタは、天使なの──…?」
嘘みたいな、質問だった。