モイラ --天使が犯した罪と罰--
しかしその問いが聞こえてきたのか、ユマはぴたりと歩みを止める。
何故そんなことを言うのか、と言わんばかりに彼女の背中には陰りが見えた。
不味い質問をしてしまったと、その時感じてしまった。
彼女は確かに天使みたいな存在だが──……非現実な存在ではないのだから。
「……なんでそんなことを言うんですか」
帰り道に一緒にジュースを飲もう、と分けあったオレンジジュースの缶が、ユマの手から滑り落ちる。
コンクリートから漂うオレンジジュースの香りが、妙に脳から離れられない。
「冗談に決まってるわよ…!
クロイにとっては、好きな人が戻ってきた感覚なんでしょうけど……」
「…………」
普通の会話になると思っていたそれが、緊迫感のあるものへと代わり、冷や汗をかいていた。
しかしユマはどこか冷静ではなかった。
寧ろアリアの問いに──困っているようにも見えた。
「ユマ、大丈夫?」
遅れて「はい」とユマは呟き、会話はそこで終了した。
そこから会話はなかったが、お詫びなのか、後からユマが寝る前にホットミルクを作ってくれた。
ユマの髪の毛と同じ色をしたホットミルクは、ほんのり蜂蜜の甘味を帯びていた。