モイラ --天使が犯した罪と罰--



「このまま、生きてはいけないことは分かってる」



呼吸苦の中でもがき、苦しみながら私は声を絞り出す。


その様子をエリスは静かに見ていた。



「…でも、どうやったら私はいなくなれるの」



脳裏にちらつくのは、出会ってしまった2つの存在。


私の光となってくれるアリアと、私の影を追うクロイが、ぐちゃぐちゃと液体のように背中へと纏わりつく。


もし私が一人だったのなら、きっとエリスを受け入れられていたのに、運命は残酷だ。


私の脳と心は乖離して、この世界へと引っ張られていく。



「僕知ってるよ、“いなくなり方”」



エリスは窓辺へと足を運ばせ、天井へ向かって手を掲げた。


その手は煌めく一番星を示しており、私は足を引き摺りながらエリスの元へと近づく。


カーテンの無い窓辺は月光によって床が照らされるが、そこにはエリスの影は無く、私の影も徐々に薄れていく。


これが【ならず者】かと失望すると同時に、エリスはどこか満足そうな笑みを浮かべていた。



< 159 / 167 >

この作品をシェア

pagetop