モイラ --天使が犯した罪と罰--
「悪人に“生きろ”なんて言うのは、
天使としては間違っているんじゃないかな」
「物事の良し悪しは誰かが決めることじゃないわ」
「なるほどね、生きることが罰か……」
私が生きていたら、きっと貴方の息の根を感じることができるんだろう。
吐息も、体温も、その人に在る全てのことも。
それが現世で消えないように、私が貴方を生かしてあげる。
生きて、苦しんで、罪悪を感じるように。
「天使様、俺と取引しない?」
「貴方が死なないことなら、なんでもいいわ」
アイテル、私が貴方を裁いてあげる。
「君の思念に協力する代わりに、
俺に“愛情”というものを教えてほしいんだ」
この時の私は知らなかった。
この取引が、アイテルという存在が
私を、堕ちた天使にすることを──……。