モイラ --天使が犯した罪と罰--
コマーシャルに映っていたアイテルは、どこか遠くを見つめているようで、それでいて虚ろな表情をしていた。
生きているはずなのに不思議と生気が無かった。
結合双生児として生まれたアイテルは、すでに一人の身体で動いており、ふと彼が言っていたことを思い出す。
妹が、手術中に亡くなったこと。
妹が、“透視”の能力を持っていて、崇められ【ヘメラ】が誕生したこと。
(…“透視”の能力は、結局なんだったのかな。
明日、番組で話されるとしたら、それで分かるのかな)
もしアイテルの妹が“透視”の力を持っていなかったら、アイテルと妹の運命はきっと、ねじ曲げられることは無かったのかもしれない。
いや、きっとそんな簡単なものじゃない。
きっとアイテルも、妹も、生きながら苦しんで…もがき続けて、【ヘメラ】にいたのだ。
そこが彼らの、居場所だったから。
(私はアイテルに名前を教えていない、それなのに私のことを“ユマ”と呼んだ)
アイテルに感じた美しい懐かしさは、偶然なのだろうか。
私は、アイテルという存在を──知らなければならないのだろうか。