モイラ --天使が犯した罪と罰--



(…でも、なんだろう)



嫌じゃない。


アリアに対して安心感を抱いてるからだとか、家族のように思っているだとか、理由付けはいくらでもできるはずなのにそれができない。


ただこの時間が限りなく大切で、少し恥ずかしくて、でもドキドキしているのが分かる。



「ユマがいなくなるのが怖いわ」


「え…?」


「独りが寂しいって、気づいてしまったから」



「それは私もですよ」と小さな声で呟くと、ふとエリスの言葉を思い出した。


“ならず者”の私はきっと、この世からいなくならなければならない。


存在することで、この世の調和を乱すといわれている“ならず者”は、きっとこうして人に触れることすら許されない。


だけど神様、今だけは許してください。


私はこんなに優しい人に、出会ってしまったんです。



「本当はね、毎年この時期になるとね、体調がぐっと悪くなるの。
トラウマっていうか、色々あってね。
アタシも強い人間じゃないから」


「そんな、本当に強い人なんていませんよ…」


「分かってる、分かってるの…。
でもアタシは、どうしても乗り越えられそうにない。
辛いけど、そういう運命なんだわ」



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