モイラ --天使が犯した罪と罰--
この世界なんて嫌いだ。
生まれてこなければ良かったと、何度願ったことか。
手術の後助からなかった妹に嫉妬して、
自暴自棄になって、
けど死ぬことすら出来なかった。
そんな自分が、一番憎くて、気持ち悪くて、大嫌いだった。
『アイテル』
君は優しい声でそう呼んでくれる。
大嫌いな自分を、罰するために降り立った天使。
あまりにも美しくて、儚くて、真っ白で…。
自分とかけ離れている天使様から、愛されたら幸せなんだろうなって、そう考えてしまった。
だから、天使様と取引をした。
恐らくこれが、生涯最後の我が儘だろう。
君の名前は、敢えて聞いていない。
だって君の名前を覚えてしまったら、俺はきっと、君から離れられなくなってしまうだろうから。
俺、本当に愛されたことがないから、人との距離感が分からないんだ。
だから、君がこうして隣にいるだけで、胸が高鳴る。
君に依存してしまいそうな気がして、少し怖い。