モイラ --天使が犯した罪と罰--
「…──テル」
君の声が、鼓膜まで届く。
「アイテル」
瞼を開ければ、君と出会って4日目の朝だった。
君はどこか焦ったような表情で、俺の顔を見つめていた。
「随分とうなされてたみたいだけど…」
「大丈夫だよ、ちょっと悪い夢を見ただけだから」
天使様の顔を見ると、(ああ、起きたときに誰かが隣にいるのっていいな)なんて思ってしまう。
妹とずっと身体がくっついていたくせに、俺はどこかいつも孤独だった。
孤独だったからこそ、つい誰かにすがりついてしまいたくなる。
「君は、俺だけじゃなく【ヘメラ】を潰すつもりなんだろう?」
天使様の思念は、薄々分かっていた。
きっと俺にだけ罰を与えるために、この場所へ降り立っていないだろうというのも、最初から分かっていた。
「そうよ、それがどうしたの?」
「その使命が達成されれば、君は俺の前からいなくなるのかなって」
「………」