モイラ --天使が犯した罪と罰--



「アイテル、最近貴方どこか変よ」


「そうかな、変って何が?」


「ふとしたときに焦ったような表情(かお)をするもの。
…何かあったの?」



月が顔を見せる真夜中、俺が潜るベッドの側で、天使様は心配そうな表情を見せる。


天使様はこの2週間で、色々な表情を俺に見せてくれた。



少し馬鹿にしたような意地悪そうな表情。


俺の目をじっと不思議そうに覗く表情。


不機嫌だけどどこか満更でもない表情。



無愛想な所もあるのに、どこか愛らしくて、憎めない。


そんな君の表情が大好きだったのに、いつの間にかお互いに哀しげな表情を浮かべるようになった。



君は意外と、俺よりも勘が鋭いのかもしれない。



「このままの状態がずっと続くわけないよなって、そう思ってたところ」



朝日と月のお陰で、日の過ぎ去りはよく分かるのに、季節だけはどうも曖昧だった。


けれど天使様は軽々と外に出ることができるから、桜が咲いてただの、新緑が増えただの教えてくれる。


君を見て、俺は感じることの無い色々なことを、得ているような気がする。



それが愛情というのなら、俺はきっと君がいなくなったら



(また、真っ暗な世界に戻ってしまうかもしれない)



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