モイラ --天使が犯した罪と罰--
「はぁっ、は、ッ……ぁああ…!!!」
息をする度に、肺の中が痛んでいく。
それは皮膚も一緒だった。
幸い服に引火していないが、燃えるような肌の感触に戦慄する。
けれども走っても、走っても、出口は見えてこない。
窓の外に出たはずなのに、俺たちは一体どこに向かっているのかもさっぱりだった。
俺は初めて歩みを止めた。
振り向いて後ろにいた、天使様は泣いていた。
「もう……【ヘメラ】はこれで終わる」
だから、天使様はここから離れて。
これは、我が儘ではなくて願いだった。
好きな人にする、最初で最後の願い。
神様に届きますように、と純粋に願うような、そんな。
───2回目の爆発がきた。
もう、建物の倒壊は免れないだろう。
黒煙の中、君の綺麗な瞳だけがよく見える。
その目は、俺と同じく泣いていた。
ああ、君も本当は、分かっているんだろう?