モイラ --天使が犯した罪と罰--
「……はぁ、はぁっ…!!」
羽根が無くなった君の頭から、光輝く羽根が消えていく。
半透明の存在だった君が、鮮明になる。
君の息の根が聞こえる。
「……っ、アイテル!私に捕まっていて!!」
君がその手で俺の身体を起こして、そこでようやく理解した。
君の手の感触が伝わる。
君の体温が分かる。
君が、
俺のために羽根を引きちぎってまで
人間になってくれたのだと──…理解した。
俺は君の気持ちに答えるように、残された力で君にしがみつく。
そして、一歩一歩、足を進めていく。
「……アイテル」
俺に「生きて」と命じてくれたこと。
俺の命は、もしかしたら君のためにあったのかもしれない。
「いきて、一緒に………星を見ましょう」
歩きながら俺は首を縦に振る。
そして頭に写るのは、君と一緒に星が見える丘で、お互いにおしゃべりすること。
聞こえる声は幻かな、と想像しても俺は幸せで、二人で生きる夢を見て、必死で外を目指していた。