モイラ --天使が犯した罪と罰--
アリアドネの糸
──『ユマ』。
優しい声が聞こえる。
優しい、2つの声が。
私は思わず、『おはよう、ヘメラ。アイテル』とそう返事する。
すると2人は笑顔でこう答えた。
──『えへへ、朝からユマに会えるなんてラッキー』。
──『俺も。寝癖がついているのはちょっと気になるけど』。
お揃いの銀髪と琥珀の目は、私の記憶を大きく揺さぶって、瞳が潤う。
横腹がくっついて1つの身体であるはずなのに、2人分の重みを確と感じている。
(きっと貴方は、幼い頃のアイテルなんだわ)
視界がぼやけていたとしても、それだけは分かる。
貴方と共に過ごしていて、亡くなった妹の姿さえも分かるのは、きっと私が貴方の心に触れすぎたせいなのかもしれない。
『ねぇ、ユマ』
貴方の心に触れすぎたせいで、私に残ったのは
『……どうして俺を殺したの?』
後悔と、そして……安堵。