モイラ --天使が犯した罪と罰--
「……!」
急に現実へと意識が戻り、私は大きく目蓋を開く。
どっと神経が働き出すのが分かり、冷や汗と動悸が襲う。
それと同時に私の手には、薄手のシーツの感触が広がっていた。
そしてどうやら私の体温を守っていたのは、腹部まで覆われた羽毛布団であり、私は思わず唾を飲み込んだ。
ここはきっとベッドの上だと、確信を持つまでに時間は掛からなかった。
「…私、ここで寝ていたの?」
なら、先程見た光景は夢ということになるだろう。
私はその事に少し胸が痛み、嘔吐を我慢する。
少し冷静になった暁に、部屋を恐る恐る見回してみる。
木製の建築物に、ベッドサイドには少し埃を被ったランプが光続けている。
窓の外を覗くと、私が先程までさ迷っていた繁華街の姿がそこにあった。
(……離れている場所にいるわけでは無さそうね)
私の手の甲には、【ヘメラ】での火災の影響を受けてか、火傷と煤の痕がある。
少しその部分を軽く触れてみると、じんわりと滲出液が出て、思わず唇を噛み締めた。