モイラ --天使が犯した罪と罰--
しかし手に残るものは、火傷の感触だけではない。
あの時、アイテルの首を絞めた感触が、私の手に纏わりついては離れない。
例えるなら、泥のようだった。
泥を触っているかのような感触。
気持ち悪くて、でもどこか冷たくて、どろどろしていて。
その中に、貴方の頸動脈を感じる。
(………わたし)
人を、殺したのだ。
天使ではない、人間の姿の私が……人を殺したのだ。
それも、私が“生きて欲しい”と願い続けた貴方が。
「……う、ッ…」
ぐらぐらと気持ち悪くて視界が揺らいでいく。
思わず膝をついて呼吸を落ち着けようとするが、そのままぐらついて倒れてしまった。
嘔気はするのに嘔吐はせず、ただ苦しい状態が続いていく。
罪を犯した重みで私は押し潰されそうで、ぎゅうっと胸が締め付けられた。