モイラ --天使が犯した罪と罰--
浅い夢から覚めると、目の前にはアリアが救急箱を持って私を見つめていた。
手当てする、と言っていたのは本当のようだ。
私は断るわけにもいかず、手当てを了承し、彼へ腕を差し出す。
「火傷は痕が残っちゃうから大変よ~。
まあ、このくらいなら茶色くなるだけで済みそうね」
生理食塩水で軽く洗浄し、患部に軟膏を滅菌舌圧子で塗り広げていく。
そこにガーゼを当て、テープで固定するのを何ヵ所か繰り返していく。
「…すごく、手当てが上手ですね」
思わず口からそう言葉が漏れていた。
彼はにこっと嬉しそうに微笑む。
「そりゃそうよ、外科医が手当てが下手でどうするのよ~」
さらっと言ってのけた彼の職業に、私は目を丸くしてしまう。
「あら、“そうは見えない”って反応ね。
よく言われるわよ、“こんなちゃらんぽらんがドクターなのぉ!?”ってね」
そんなこんなで手当てが終わった時には、私の身体は可動域が増え、痛みも安定してきた。
外科医、というのは本当なのだろう。
彼も上手くいったことに満足したのか、「熱傷の処置は久しぶりだわ~!」と得意気な表情だ。